唐人町ギター教室では、楽譜が読めない初心者の方からプロを目指している上級者まで、現役プロミュージシャンが丁寧に指導致します

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演奏について思うこと(その3)

 

昨日ひさしぶりに自主企画主催のコンサートだった

先月もご一緒させていただいたギタリスト松本富有樹さんとのデュオコンサートだったが 彼とふたつのコンサートをやるにあたって 今まで感じなかった あるいは気が付かなかった様々なことに目を向けさせていただくよい機会となった

 

わたしの周りにいるお客さんはなにを求めているのか?

知らない曲と出会いたいのか 知っている曲を聴きたいのか 自分がこれから弾きたい曲が見つかるかなと思って足を運ぶか 自分がかつて練習したことのある曲をプロの演奏で聴きたいのか 音楽を楽しみたいのか ギター演奏を楽しみたいのか 非日常なコンサートの雰囲気を味わいたいのか 演奏家個人の応援をしたいのか、、、

人によって比重は違うが おそらくこれらの要素がちょっとずつ重なり合い 絡み合った結果 コンサートへと足を運んでくださるのかもしれない

 

今回の共犯者である松本さんと 事前に話していたのは「たがいに演奏面で活躍しない」という一点だった 

演奏における熟練度 完成度を敢えて上げないことで 当日お互いの音に敏感にアンテナを張る事が可能になる 当日対応するための個人練習は互いに積んでいたが 一緒に音を出す”合わせ練習”は 今回最小限にとどめた

<演奏の完成度>および<演奏家が舞台上で活躍すること>を期待して足を運ばれたお客さんは 肩透かしを食らったかもしれない 加えて終演後の演奏家自身の”達成感”というものは無きに等しい

だがそれらのことを犠牲にして得られるものは 和やかな空気感のなかで音楽そのものを楽しむ感触 それと完成度を上げないことで生まれる隙間(余白)を お客さん自身が自発的に補填してゆく”自由”

 

完成度の高い熟練をステージ上で披露するとき お客さんの評価比重は音楽そのものでなく演奏者個人へと傾くことになる それは音楽産業に必要なことではあっても私には必要ない

場所が福岡だろうが 大阪 福島だろうが パリだろうが キューバだろうが そのとき自分の目の前にいる人たちの存在だけが わたしにとっての現実であり 興味の対象でありつづける それ以外にはない

 

(つづく)

2021.11.22.

 

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“演奏について思うこと(その3)” への2件のフィードバック

  1. 木下尊惇 より:

    昨日は残念ながら伺うことができませんでしたが、先月のコンサートを聞いて、今回のコンサートも素晴らしいものになる事を確信できました。
    次回またご一緒する機会が、ますます楽しみです。

    • 松下隆二 より:

      木下 尊惇さま
       
      コメントいただきありがとうございます
      ひと前で演奏するときの感触、やりとり、信頼関係の構築など
      木下さんのステージからこれまで本当にたくさんのことを教えていただきました
      感謝しています
      またご一緒させていただける日がくることを楽しみに

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