唐人町ギター教室では、楽譜が読めない初心者の方からプロを目指している上級者まで、現役プロミュージシャンが丁寧に指導致します

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試行錯誤について

 
「ギターのレッスン」ということに携わり始めたのは二十歳の頃だろうか。
 
 
その後一年間の留学経験を経て、帰国した24歳を仮に「プロ活動の開始」と考えるとすれば、
レッスン・プロとして18年以上の歳月をおくった事になる。
長いとも短いとも思えるその18年のあいだ、様々な生徒さんが目の前を通り過ぎてゆかれた。
非常に強い印象を残し、名前も顔もはっきりと思い出せる生徒さんもいれば、大変失礼だが
名前も顔もはっきり覚えていない生徒さんもいる。
 
その中で当然「プロのギタリストになりたい」と希望する若者たちも何人かいた。
別に資格や免許の要る世界ではないので、
“私は今日からギタリストです”
と宣言してしまえば誰でも開業はできるのだ。(ほんとうです、やってみたらいい。
あなたにも“開業”は出来ます)
ところが世の中の他の職業と同じく、開業した職業を“維持”するのがやはりむずかしい。
 
 
いわゆる「プロ」ってなんだろう。
ギターのうまい下手は関係ない。単に「それだけで食えてる人」というだけの話だ。
 
 
 
18年間私の目の前を去来した「プロ志望」の若者たちの多くは、「開業」にすら
辿り着けなかった。
しかしその中の幾人かは現在「プロ」として着実な活動を続けており、私にとって
心強い存在となっている。
彼らに関しては“私が育てた”などと、どうしても言えないし思えない。
私の指導法が優れているわけでもない。もしそうであるなら今まで関わった若者たちは
全員プロに育っているはずだ。したがって私は「教育システム」というものを信用しない。
現在プロとして活動している連中、彼らは自分で努力して勝手に育った。
プロ志望者に対し私が出来ることといえば、彼らが“自力で育つ”のを極力邪魔しない、と
いうことだけだ。
 
 
 
「極力邪魔しない」という事をより具体的に言うと、彼らが試行錯誤できる場を提供し、
彼らに失敗させる、そして彼らの失敗については彼ら自身に答えを出してもらう。
そこに正解などは無い。私の対処法を知りたくて聞いてくる人には教えるが、それはあく
まで「私の場合」である。彼らが自力で導き出した答えは私のとは違うと思うが、そのほ
うが私は嬉しい。
 
 
 
ところがどうも周りの大人たちはいろいろ口を出し過ぎる。
失敗したところは本人達が身にしみて感じているのだから、聞かれない限り触れる必要は無い。
若者が失敗できる場を無言で提供し、終わった後ねぎらいの言葉をかけるだけで充分である。
 
 
 
 
「試行錯誤」を許容する器が、“人が育つ場”に必要なものではないかな。
 
 
以上が18年の試行錯誤の末辿り着いたわたしの(あくまで現時点での)結論である。
 
人ごとだと思ってせっかちすぎるぜ、みんな!
 
 
 
2013.6.18.

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“試行錯誤について” への4件のフィードバック

  1. こんばんは。
    ただ、弾きたいという思いの元に、先生のレッスンの扉をノックさせていただきました。
    正直、一昔前に受けて、挫折した時のレッスンは、何も覚えていないのです。
    けれども、今は、影の薄い生徒ではありますし、レベルが低いものではありますが、
    レッスンの合間に先生が語られる、一言一句は、しっかりと記憶しています。
    上手くなりたい、上手に弾きたい、ただそれだけではない、楽器。
    まだ悶絶しています、楽譜が怖く、作者の心が聞こえてこず、読み取れません。
    それでもきっと、今度は弾いていくと思います。
    自分が、ギターが好きだということに、やっと気づきました。
    (といって、練習不足を誤魔化しておきます、こそこそ)
    いずれは少しでも、作曲家が何を語りたかったのか、それを感じ、音に表すことができれば、そんな生意気なことを思います。
    どうぞ、よろしくご指導のほどを。(はじめるのが遅かったと悔やんでいます)

    • ryuji より:

      遅くなんかないですよ~っ!
      過去の体験があるからこそ、今現在のような気持ちで取り組めていらっしゃるわけで、お楽しみはこれからですよ。
      ちなみに前にもお話した事があるかもしれませんが、「一般の生徒さん」と「プロになりたい生徒さん」に私がレッスンする内容は全く同じです。音楽を感じる心に
      「プロフェッショナル」と「アマチュア」などと言う区分があるはずがありません。ただ生徒さんそれぞれのペースに合わせたいとは思っております。だから仮にレッスンで言われた内容が難しかったとしても、「俺の言った事を次のレッスンまでに必ずこなして来い」などとは少しも思っておりませんのでご安心を(笑)
      もひとつちなみに、私から見てHONGOUさんは「影の濃い
      生徒さん」です(ゲラゲラ)。

  2. 他人と比べることがまず間違っているとは思うのですが、
    上達が遅いのが、激しい悩みではありますです、はい。
    己で実感できないので、萎えてます、毎回ですが。

    • ryuji より:

      フォルクローレの木下氏が以前こんな話をされていました。
      「魚の干物が2種類ある。ひとつは機械を使って短時間で乾燥させたもの。もうひとつはじっくり時間をかけて天日に干したもの。あなたならどちらを選びますか?」
      時間をかけて身につけたものの方が、長く味わい、楽しめるとおもいます。

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