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親愛なる先生(パブロ・マルケス編その2)

その後も何と無く気になっていた私は、パブロのCDを買い、何と無く聞いているうちに
そのCDはいつしか私の一番の愛聴版になっていた。ルネッサンス音楽の大家フランチェ
スコ・ダ・ミラノのいくつかのリチェルカーレとファンタジア、シューベルトの6つの歌曲
に加え、現代音楽の人気曲であるダンジェロの「2つのリディア旋法の歌」が収録されて
いた。
録音状態は決して良くは無いが、何回聞いても聞き飽きない。そして何よりも普段生活
しているパリの空気感と非常に密着した音楽に感じられた。話は少しそれるが、そこの土
地の雰囲気や空気に溶け込む、音楽や演奏スタイルというものの存在を、留学して初めて
経験した。例えば昔の巨匠ギタリスト、ミゲル・リョベートの録音演奏は日本で聴いた時
には違和感を感じていたが、パリの生活の中ではなんと自然に心に響いた事だろう。
別の例では、留学中に違和感無く自然に弾いていた曲が、日本に帰った途端全く弾く気が
無くなってしまったり、取り組むのに変なエネルギーを必要としたり、あるいはその逆の
現象だったりと、、、。
 
パブロのコンサートには2回足を運んだ。最初のはアジャーラの「南米組曲」やバリオ
スのワルツ、ブローウェル編「キューバの子守歌」等一般のお客さんを意識した感じの
彼にしては比較的ポップな選曲だった。
印象に残っているのは2回目に聴いたコンサート。前半フランスの作曲家エリック・ペ
ニコーの現代作品などを弾いた後、後半アタマのシューベルト歌曲が始まった途端、私は
泣いてしまった。あの日のシューベルト演奏はどの曲も“すばらしい”というものを超越し
ていた。コンサート終了後パブロに是非レッスンを受けたい旨伝えると、快くOKしてく
れた。
実はこの時点で、私は日本に完全帰国する事を決め、既に航空チケットも取っていた。
だがコンサートで感動した私は、フランス留学残り最後の2ヶ月間で、パブロ・マルケス
からありったけのものを吸収するぞ、と心に誓ったのだ。
 
 
(つづく)
 

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