唐人町ギター教室では、楽譜が読めない初心者の方からプロを目指している上級者まで、現役プロミュージシャンが丁寧に指導致します

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むかしむかし、ある現場で・・・

今からさかのぼる事10年程前の話である。
私は友人がやっている福岡市内のとあるお店で生演奏をしていた。(残念ながら現在は無いが)
店は本格的なスコットランド・パブでお客さんが15人入れば満席という、ギターを生音で爪弾くには丁度良いスペースだった。
飲食店であるから当然演奏目当てでないお客も多い。
おしゃべりしたくて来ている人達を、私の演奏によって邪魔したくはないので、そんな時は邪魔にならない曲をセレクトした。
一番頭を悩ませたのは、そういったお客と演奏を聴きに来たお客が混在している時(意外に多いシチュエーションなのよ、これが・・・)だった。
お客同士の間で「お前ら、静かにしろよー!」「うるせー、こっちは客なんだよ。生演奏が何だってんだー!」的オーラが飛び交うのはあまり良い図ではない。
”演奏会場”として、音楽がその空間を占拠してしまうのは、そこが飲食店である以上私は避けたかった。
そんな時はコンサート・ホール的表現(演説口調)で演奏せず(つまり”表現”する事を押し出さず)、曲の展開そのものに集中しながら、静かに静かに進めてゆく。そうすると最終的にはおしゃべりをしていた人達もが音楽に集中してくれる、というハッピーな結末に落ち着く事が多かった。(もちろんそうでない場合もあったが・・・)
何年かに渡り生演奏を続けたあの現場で学んだ事は「演奏する人間が変にプライドを持つ必要もないし、変に卑屈になる必要もない」という事だった。
ある晩の事、いつものように演奏し終えると、カウンター席で聴いていた二人連れの女性客のうちの一人が私に声をかけた。
「演奏の合間のしゃべり(MC)がとても素敵でした。あれがあったから安心して聴けたワー。」
するともう一人の女性がすかさず「いや!私は音楽には言葉は必要ないと思う!」
その後も続く二人の議論を呆然と聞きながら、”全てのお客を満足させる”等という幻想は今後一切抱かない、と私は心に誓った。
しかしイイお店だったなー。またお店始める時は言ってね、大谷さん!ギター弾きに行くから。

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