記憶というものに容量はあるのだろうか、、、

あるとしたら真っ先に捨ててしまいたいものはいくつかある。

　

「うまくいった時の演奏の記憶は残らない」

これは、わたしにとって一番付き合いが長いギタリストである池田慎司さんが、うん十年前（たぶんまだお互い20代の頃）におっしゃってた言葉だが、当時から妙に納得させられた。

そう、うまくいった時の演奏の記憶は自分の中に残らないが、ダメだった時の記憶はその都度ハッキリと心の奥に刻み込まれる。それを忘れる事が出来たらどんなにいいだろう、、、。この「ダメだった」というのは私の場合、演奏内容のことではない。「演奏できないくらい緊張してガクガクになった」という、いわばカラダとメンタルについての話である。まったく燃えるゴミ４５ℓ の袋に詰めて全部出してしまいたい、、、（ブツブツ）。

実はそれらを仮に処分できたとしても、私の記憶容量の多くを喰ってしまっている無駄なものがふたつある。ひとつは小３の時に友達と張り合いながら覚えた ” 円周率 ” 。下８１桁まで覚えているのだが、もういい加減忘れてしまいたい。このメモリーを消去出来たら、「南のソナチネ全三楽章」くらい軽く暗譜できるにちがいない。

もうひとつ大きく容量を喰っているものは、これもやはり小３の時に大正生まれの祖母（故人）から教わった ” しりとり ” 。これはただのしりとりではなく、講談社が1925年（大正14年）に創刊した『幼年倶楽部』の付録として付いていたもので、当時の子供たちは夢中になって覚えたものらしい。

祖母が生前、すらすらと得意気に暗唱しているのを聞いて、面白かったので教えてもらったのだが、こいつがなかなか容量を喰ってるのよ。

ところが先程ふと気になって検索かけてみたところ、やはり「ばあちゃんから教わった」というひとが数人、記事をあげていらっしゃったが、どうも私のものと皆様のものとで違うところが多い。どちらが「正しい」「間違い」ではなく、祖母のヴァージョンをあげてる人は無かったので、とりあえずあげておく。どこかの過程で変形したのか、あるいはふたヴァージョン存在したのか、わからないが、いずれにせよ時代を反映していて興味深い内容である。ただこのメモリー容量は、ブリテンの「ノクターナル」に相当するかもしれない、、、。

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一月一日、四方拝（しほうはい）

はいはい、もしもし電話口

口を結ぶ賢い子

児島高徳、忠義者

ものを無駄にするな、国の損

「そんなこと知らぬ」と坊や、舌をぬき

きび団子、桃太郎さんの腰に付け

剣術の名人、荒木又右衛門

門前の小僧、習わぬ経を読む

無駄遣い、決してするな

なぎなた持った弁慶あやまった

たこ入道、八本足で踊りだす

相撲取り、どしんどしんと四股を踏み

みそ醤油、豆腐納豆はお豆から

ラッパで起きる兵隊さん

サンタクロース、そりを引き

引き出しの中は始末よく

桑の葉むしゃむしゃ、かいこのご飯

ご飯の時はきちんと座る、よい子供

友達と仲良く、親切に

日本は五大強国のひとつ

椿の実から油がとれる

留守番するのはポチのやく

約束守って、帰る日暮れぎわ

我が陸軍は十七師団

団子とススキは月見の夜

夜昼働く時計かな

仮名のはじまり弘法大師

信玄と謙信と戦う川中島

自慢高慢バカのうち

ちょうちん行列、めでたい日

ヒバリさえずる春の空

空は七色、虹の橋

走る軍艦、蒸気の力

ちからもち相撲横綱、常ノ花

花の名所は吉野山

ヤマガラこがら、しじゅうから

体を鍛えて勉強励め

明治十年西南戦争

総理大臣、伊藤博文（はくぶん）

ぶんぶく茶釜、尾が生えて

てんてん手毬の音の数（かず）

頭巾をかぶった大黒さま

マッチ一本火事のもと

豊臣秀吉、草履取りから天下取り

陸に砲台、海に軍艦

堪忍は世渡りの道

道を歩むは左側

かわいい子供に旅させよ

幼年倶楽部は日本一

（一月一日、四方拝）

　

２０２３．０７．０５．