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ショーとライブ

 

音楽の舞台は 少なくともふたつのタイプ(要素といってもいい)が存在している

すなわち ”ショー”と”ライブ”

両者の最も大きな違いは 《不確定要素》に対して 

「拒絶する」か「受け入れる覚悟がある」か だと考えている

 

ショーは その名の通り ”見せる要素”が比重として大きく 分刻み 秒刻みの予定調和で進行してゆく そこに想定外に侵入してくる《不確定要素》は ”アクシデント”として 極力排除され 反省会で責任が追及される

ライブは 《不確定要素》を ”アクシデント”ではなく”ハプニング”として受け入れる 予定調和の進行よりも 演者と客席に起こる対流を感じながら進む

 

ミュージシャンでも どちらに興味があるかの比重は ひとによって当然異なる

日本の場合 芸能界で活動してきたミュージシャンは ショー・マン的意識が強い

予定通りに物事を遂行すること それ自体が楽しい というひとたちである 

 

クラシックのミュージシャンでも 無意識のうちにそういう音楽の作り方をする人は結構多い

昔リハーサルにおいて「私はここのカデンツァで この音符からラレンタンドをかけ始め このくらいゆっくりしてゆきますので 私がこの音符を吹くときに付けてください」などと注文するフルート奏者がいた (聞いて付けますがな そんなもん)

コンサートの曲間で なにをしゃべるか 言い回し方も含め すべてを書き込んだ台本を 譜面台にのせているミュージシャンもいた

そういうひとたちは 予定調和を楽しんでいるというよりは 自分が安心したいが為にやっているのだろうが 《不確定要素》を受け入れる覚悟がない という点においては 結果ショー・マン的であろう

 

予定調和で物事を進める それ自体は別にいいのだが ここにひとつの落とし穴があることは意識したい

それは本人も気づかぬうちに 「計画通りに遂行すること」それ自体が目的になってしまい その空間に足を運んでくれているお客さんとの対流を感じないまま進んでゆく その危険があること

コンサートでは少なくとも”対流を感じること”が優先順位の1位 ”計画遂行”はそれに続くものでないと なんのためにお客さんを入れているかわからない

 

もちろん ”ショー”も”ライブ”も どちらもあったほうが 世の中おもしろい

ただミュージシャンは 確定 不確定 どちらの世界にも巻き込まれる可能性があり 「今 自分が身を置いている状況はこっちだ」と把握できているほうが 翻弄されない

まあ翻弄されるのも《ハプニング》ということで悪くはないかもしれないが、、、(笑)

 

ロックを好きな人には通じる話だと思うが ルー・リードやニール・ヤングばっかり聴いて トーキング・ヘッズやデヴィッド・ボウイを聴きたくない時期が ひと頃あった(逆の時期もある)

私にとっては前者はミュージシャン 後者はショー・マン

映像抜きの状態でも その要素というか気質が 音を通じてぷんぷん伝わってくるのである

 

2022.1.13.

 

 

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