唐人町ギター教室では、楽譜が読めない初心者の方からプロを目指している上級者まで、現役プロミュージシャンが丁寧に指導致します

Blog

アルバイトの思い出

 

過去に一年間だけ存在した私の大学生時代・・・

自主卒業(笑)するまでの期間 今振り返ると現時点ではなかなか経験できないことをさせてもらった

部活動のボクシングはじめ いくつかのアルバイトなど

 

一旦社会に出て専門的職業に就いたり 結婚して主婦に専念したりすることで これらに飛び込む機会はガクッと減る

もちろんそこでエネルギーと勇気をふりしぼって 新たな分野を”えいっ!”と体験することは可能ではある 

だが心の冒険を伴うこと 自分のなかの可能性や不可能性を探るのは 精神の柔軟性をそれまでに養っていないひとがやると ”骨折”する恐れもある

「若い時に苦労も含め いろいろやっておくほうが良い」

むかしからそういうことがよく言われていた理由が この歳になるとなんとなくわかってくる

だから大人になってギターを始める生徒さんたちの勇気というものを ギター講師はある程度理解しておく必要があると思うのだ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

一方で現在の私の場合 ギタリスト以外の仕事でどのくらいつぶしが効くのかというと 甚だ心もとない・・・

初めてのアルバイトは大学に入ったばかりの18歳の夏 日雇いの現場で足場を組む作業だった

すべてが私にとって全く初めての経験 現場でニッカポッカを履いたプロのおじさん達がまぶしく見えた

「そこにあるヘルメット、どれでもいいけん使え」と言われ 転がっているうちのひとつを取り 頭にかぶると それを見た初老のおじさんが苦笑いしながらつぶやいた

「おまえ、、、それ監督やろうが、、、」

その時初めてヘルメットにヒエラルキーがあることを知ったのだ

横線が一本入っているのが班長 そして私のは二本線が入っているやつだった

 

筋交い、ベース、ロング(エレベーター)、クランプ(直交と自在)など 様々な専門用語を覚えるのは楽しかった

よぼよぼの職人さんが重たい鉄パイプを軽々と担いでいくのを驚きをもって眺めた

当時1980年代の終わり スマホは当然無いので 休憩中はおごってもらったジュースを手に日陰に座り とりとめのない話をしたりした 休憩になると途端に無口になる人もいた その逆も

セメント流し込み作業も終え ひと夏の現場も解散 あの日以来 日雇い作業に行ったことはないが 今振り返っても私の中では貴重な体験だ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

大学で紹介してもらったバイトに ”新聞社の世論調査”があったので応募したことがある

学生10人くらいで新聞社に行き 担当者から説明を受けた ふむふむ 次の選挙でどの政党を支持するかを聞いて回ればよいのね 先方各家庭には調査員を派遣する旨 すでに伝えてあるとのこと そして我々調査員メンバーに 担当する地区がそれぞれ割り当てられた

ところがこれが実は大変だった 私に割り当てられた地区は新聞社から電車で30分 その駅からさらに奥地に入った山の周辺だったのだ 一軒一軒の距離がものすごく離れている(ありていに申し上げれば田舎)

他の調査員のエリアを地図で見せてもらうと 駅周辺の街中ばかりで ひとりが一日で回るノルマ15件が密集しているのだ(ずるい) 私の15件は地図で見ると まるで都会で見上げる星空のようにぽつりぽつり・・・

とにかくエリアが広すぎた 3件回った時点で汗だくだ(調査員だからスーツなの) 日差しは容赦なく照り付ける そしてアンケートに答えるのを拒否するひとも当然いる 意外に回収むずかしいな う~ん とりあえず昼ご飯にしよう そこで町(ありていに申し上げれば村)に一軒だけある食堂に入り 焼きそばを注文した私

ふとイヤな予感がからだを走り 財布を見た このまま焼きそばを食べたら帰りの交通費が足りないではないか チラリと厨房を見た 無表情に野菜を炒め始めているおばさん しょうがない 食べて 払って 調査回って それから考えよう・・・

田舎なだけに 回る一軒一軒 いちいちあくの強い人が多かったが 反面 人情もあった

あるおばあちゃんなど 「よくきたねえ さあさあお茶でも、、、」という感じでアンケートの後はひたすら世間話が続いた 話し相手がほしかったのだろう

ある家などは白い肌着を着ただけのぶっきらぼうなオヤジが出てきた

「あの~事前にお知らせしていました○○新聞社の世論調査の者ですがxx敏美さまはご在宅でしょうか?」と聞いたら「おれだよ!」

え~っ? 調査表には性別欄 ”女” ってなってるのに!

という心の動揺をとりあえず隠しながら「え~今回の選挙ではどちらの政党と候補者を支持されますか」と聞いたら 薄ら笑いを浮かべ「言えないね!」

昭和の刑事モノ取調室の犯人さながらであった

 

とにかく一軒一軒の移動距離が長かった やむなく途中 藪の中に乗り捨ててあるボロボロの錆だらけのパンク自転車を拾い(あれは断じて盗難ではない)残りの家を回った

 

夕闇が村に迫っている さて問題はこれからどうやって戻るかだ

とりあえず村一台(?)の公衆電話から新聞社に電話をかけた

担当者は開口一番「え~っ?どうしてそんなことになったの?」

とにかく駅周辺まで歩いて 交番を見つけて事情を話し お金を借りて 新聞社まで戻ってこいとのこと なるほどそういう手があったか

駅前で交番を見つけ そこから新聞社に電話をし 担当者にお願いしてもらい おまわりさんからお金を借りた 小倉駅前の新聞社に行くとフロアの皆が「ああ、きみが例の・・・」と言わんばかりにニヤニヤしている

駆け寄ってきた担当者のおじさんが容赦なく私に放った一言は忘れられない

「きみは社会部の笑いものになったよ」

ですよねー・・・

 

ちなみに15件中13件分回収した私は 調査員中の成績としてはダントツにトップであった

あの頃から全然成長していると思えない現在の私 

やはり つぶしはきかないだろーな

 

(おわり)

 

2021.09.27.

 

カテゴリー:

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です