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美というものについて(その2)

 
今振り返ってみると確かなことがある
ベテランギタリスト緒方さんのあの時の言葉は
決して誉め言葉のそれではなかった
”きれい” は ”退屈” と同義だったのだ
 
”きれい” と ”うつくしい” も
おそらく異なるものであることは想像に難くない
単にことばの定義上の話といえばそうかもしれないが
それでは  “美しさ”  とはどういう在り様(ありよう)なのか?
そして齊藤先生が僕に伝えんとされていたのは??

 

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以上が過去の音楽活動の中での
美に関する個人的体験において
特に印象的だった出来事である
人類が美について考察を重ねてきた歴史は
ご存じのように非常に古く
今ここでそれらを俯瞰すること自体
とても私の手におえるものではない
残りのスペースは その後私が影響を受けた
現代における諸先輩方の
美というものに関する《様々なとらえ方》を散りばめることで一旦幕を引きたい

 

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「美しいというのはもっと無条件で、絶対的なものである。見て楽しいとか、体裁がいいというようなことはむしろ全然無視して、ひたすら生命がひらき高揚したときに、美しいという感動が起こるのだ。それはだから場合によっては、一見ほとんど醜い相を呈することさえある。」


岡本太郎~『自分の中に毒を持て』(青春出版社)
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「われわれは同じ童話を繰り返して聴きたがる子供のようなものなのである。
それは我々が初めて聴いた折に体験した、特定の美点を思い出すからなのである」

 

「われわれは、過去千年の音楽の全体像から、美的な要素を取り出し、享受しているのである。
安直に耳を楽しませる部分、すなわち<美しい>ものを取り出しているのであり、その際そのことによって音楽の格を完全に引き下げているということに気づいていない」

 

「作品の全体像の中では単にささやかな一部を占めるに過ぎないかもしれないようなさまざまな美を追求することで、この音楽の本質的な内容を聴き過ごしているかもしれないなどということに、われわれはさっぱり興味がないのである」


ニコラウス・アーノンクール~『古楽とはなにか』(音楽之友社)
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「たしかに芸術は美しい
だが 美は芸術の最終目的ではない
それはいわば餌みたいなものだ
美によってそれに魅きつけられ
美のうしろに真実があることを知るのだ
真実とはなにか
それは定義するものではなく
体験するものだ」


セルジウ・チェリビダッケ~ドキュメンタリー『ただ音楽に身をゆだねて』
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「ほんとうの美しさというか澄んだものというのは、それこそ非常に猥雑なものの上にしかうまれないよ」


武満徹~『対談集 創造の周辺』(芸術現代社)
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「”美しさ”というのは結果であって そこからものをつくることはできない」
「作曲家は”美しいもの”をつくろうとはしない」「面白いか面白くないか なんですよ」
「美であるか美でないかっていうようなことは ものを作るときの動機にはならないっていうことなんですよ」


高橋悠治~公開トーク『他者の痛みを感じられるか』(ATAK@ICC)
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(おわり)


2021.5.17.

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