唐人町ギター教室では、楽譜が読めない初心者の方からプロを目指している上級者まで、現役プロミュージシャンが丁寧に指導致します

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でこぼこ(その2)

 
「ギターなど弾くには上手な奴などいらないのだ。研究などすればする程、ツマラナクして
しまうのだ。誰にだって弾けるものだと思うから好きなのだ。」
【言わなければよかったのに日記/深沢七郎】(中公文庫)より
 
 
深沢さんったら、まるでバカボンのパパなみの悟り様なのだ、、、。
これらの言葉に
「そんなことないやい!」
と反論するほど私は名手ではないし、もはや昔のように名手を目指してもいないので安心して
これらの言葉に共感できる。
だがもちろん「努力の世界」からリタイヤするわけではない。
「サラッと上手に弾く技術」から「ゴツゴツと手触り感のある技術」に方向を変えたいのだ。
それを嫌うひとがいても別に構わないのだ。
技術を変えるにはまずは生き方から、、、、、、なのだ。
 
 
思い返せば過去に聴いたもの、観たもので私に感動を与えてくれたものはみな「でこぼこ」
あるいは「ごつごつ」していた。
 
 
尊敬するシャンソン歌手、愛川智子さんから昔聞かせていただいた「バルバラ最後の公演」
での【ゲッティンゲン】のライヴ音源。
音を外しまくっても一切ひるまず、命を振り絞るように平和への祈りを込めて唄うその凄まじさ
に鳥肌が立ったのをおぼえている。
 
 
二十代の前半、一緒に組んでいたバンドのヴォーカリスト、伊藤史厳さんの四畳半(?)部屋で
かかっていたジョニー・サンダースのLP、その中の【illagitammate son of segovia】に
おける激しいフォークギターの乱れ弾き。
これは大音量で聴くに限る。
 
 
最後に動画をふたつばかり、、、。
いずれもライヴにおける「でこぼこ乱れ踊り」である。
 
 
まずはブラジルのシンガー、カエターノ・ヴェローゾ。
ラストの「乱れ踊り」もカエターノならではのインテリ臭はあるが、カーニバルの空気感に
身を任せるような自然な動きが、見ていてある種の心地良さをおぼえさせる。

 
 
続いて1978年公開の映画「ラスト・ワルツ」から。
この映画はアメリカン・ロック界で活躍した「ザ・バンド」の解散コンサートを映画化したもの
で、ゆかりのあるミュージシャンを多数ゲストに向かえ(B.ディラン、M.ウォーターズ、
E.クラプトン、N.ヤングほか)話題を集めた。
映画の終わり近くに登場したヴァン・モリソンは曲のラストのブレイクのたびに決めポーズ
(踊りではない)をとり続けるが、これが事前の打ち合わせによるものでないことはバックを
つとめるザ・バンドのメンバーのいきいきとした表情を見れば一目瞭然である。

コントロールのすき間から「なんとも抑えがたい生命力」が吹き上げてきて、ほころびを見せる
その一瞬のすばらしさ、、、、、これは決して狙ってできる類のものではない。
美しく無難にまとめることのかっこ悪さ、「ごつごつでこぼこ」した不恰好なものがこみ上げて
きた時、自分の身を捧げて瞬間それを解き放つ勇気のすばらしさ、、、これがわたしが最近特に
気になることである。
 
(おわり)
 
 
 

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“でこぼこ(その2)” への2件のフィードバック

  1. kumi より:

    コーポ葉山の事かな?5畳半ね!(笑)

    • ryuji より:

      (笑)五畳半でしたっけ!コーポ葉山、なつかしいな~。しかしフォークを弾くには中途半端な間どりですね(笑)。
      え~、ちなみに今回の話は家賃¥15,000-(プラス共益費¥2,000-)便所、シャワー共同使用の「大東アパート」時代の話です。
      我々が出た後取り壊されましたが、あのアパート時代はおもしろい話が山ほどあります。ダンナに聞いてみてください。

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