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間 (Awai) ~クラシックギターの挑戦~を終えて

 
去る9月15日(月・祝)福岡市中央区甘棠館show劇場において唐人町ギター教室主催の
コンサート「間(Awai)~クラシックギターの挑戦」が行なわれ無事終了した。
連休の最終日にもかかわらず大勢のお客様にお越し戴き、心から感謝したい。
 
出演は松下隆二、池田慎司、山田賢、以上3名のクラシックギタリスト。
第一部は「セゴヴィア・レパートリーへの挑戦」と題し、近代の作曲家がセゴヴィアの為に作曲
したレパートリーをソロ、トリオの形態で演奏した。
コンサート中にもお話した事だが、今回のコンサートに向けて取り組むにあたって、セゴヴィア
の業績を辿っていた時、最も驚嘆させられたことは「よくぞ一人の人間にここまでたくさんの
事が成し遂げられたもんだ、、、。」ということである。
 
 
セゴヴィアはギターの世界にいくつかの革命をもたらした。
 
*同時代のギター製作家との交流による「ギター製作ヘの影響」
*ヴァイオリンやピアノと同様な「コンサート楽器としてのギター」を確立した。
*ルネッサンスやバロックなどのレパートリーを頻繁にとり上げ、ギターの世界に定着させた。
*教育者としてA.ディアス、O.ギリア、J.ルイス・ゴンサレス、J.ウィリアムス、
S.グロンドーナら現代のギター界の巨匠たちを育成した。
*世界各国で演奏活動を行い、数多くのレコーディングをすることによって、「コンサート・ギ
タリスト」のスタイルを確立した。
*当時の一般作曲家に働きかけ、曲を書かせることによってギター・ソロ・レパートリーを
豊かにした。
 
と、まあこのようなことが以前から言われているわけだが、私がこのたび改めて感じた事は、
それらはセゴヴィア個人の業績というより、いろいろな人との共同作業のたまものなのだ、と
いうことである。つまり極論してしまえば、“セゴヴィアの凄さ”とは周りの(才能ある)人間を
巻き込む能力、いわば彼は“共同作業の巨匠”なのだ。セゴヴィアが作曲を依頼した作曲家たち
との書簡に目を通した方は、セゴヴィアのあまりの“マメさ”に驚嘆するに違いない。
そして他者へのシゴトの依頼の仕方、甘え方、ほめ方、くぎの刺し方、まさに名人級である。
今回のコンサートでは「同時代の作曲家達との共同作業」の面だけにスポットを当てたのだが、
そういった観点からセゴヴィアをあらためて認識するひとつの契機となった。
 
 
そして第二部は「ポップス・レパートリーへの挑戦」
 
“ポップス”と“芸術音楽”の違いとは何か?
私は個人的に、“ポップス”は今を生きているひとの為のもの、“芸術音楽”は自分が生まれる前、
そして自分が死んだ後のことも視野に入っているものを指す、と思っている。
どちらの方が価値があるとは言い切れない。私はどちらも必要であると思っている。
 
この日出演した山田賢によるオリジナル作品、映画音楽のほかブラジリアン・ミュージックを
演奏した。
演奏の出来不出来と関係なく(笑)企画の方向が定まっていたことで、コンサートとしては
おおむねよろこんでいただけるものができたと思う。
ウラでいろいろご協力いただいた皆様に心から感謝したい。
 
プログラムは以下の通り。
 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
I部 <セゴヴィア・レパートリー>
1.セビジャーナ/J.トゥリーナ作曲
2.トナディーリャ/M.カステルヌォヴォ=テデスコ作曲
3.羊飼いの娘、セギディーリャ/F.モレノ・トロバ作曲
4.プレリュード~「カバティーナ組曲」より/A.タンスマン作曲
5.アンダンテ・エスプレッシーヴォ~「ソナタ・ロマンティカ」より/M.M.ポンセ作曲
6.ワルツ/M.M.ポンセ作曲
 
1.松下ソロ 2.山田ソロ 3.池田ソロ 4~6.トリオ演奏(4.6.松下編、
5.池田編)
 
 
II部 <ポップス・レパートリー>
1. 三本の糸/山田賢作曲
2.スロウ・ムーンズ・ローズ/A.ムーア作曲
3.カンバセイション~盗聴/D.シャイア作曲
4.ある夕食のテーブル/E.モリコーネ作曲
5.リジア/A.C.ジョビン作曲
6.ドイデッカ/C.ヴェローゾ作曲
 
1~6.トリオ演奏(2.3.4.6.松下編、5.山田編)
 
アンコール
1.オブラディ・オブラダ/レノン&マッカートニー作曲(山田編)
2.カンシオン~「コンポステラ組曲」より/F.モンポウ作曲(松下編)
 
 

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“間 (Awai) ~クラシックギターの挑戦~を終えて” への4件のフィードバック

  1. d より:

    こんばんは:) とても興味があった演奏会でしたが、今回は残念ながら足を運べませんでした。これからも明確なコンセプト&オーディエンスに優しい(笑)演奏会を期待しています。セゴビアのことはほとんど知りませんでしたが、マイルス・デイビスはジャズ界のセゴビアだったのだなと思えてきました。

    • ryuji より:

      こんばんは。いつも活動を見守って下さってありがとうございます。
      そうなのです。その比喩は本番MCでも使いました。
      一人の人間がひとつの分野において四つも五つも革命を起こした、という点ではジャズ界におけるマイルス・デイビスに匹敵すると、、、。
      これからもコンセプトやテーマを打ち出しつつ、聞いて楽しいコンサートを目指します。
      それにはやはりいろんなかたのご協力が必要ですね。

  2. Takao Yoshimoto より:

    初めてのギタートリオ演奏、楽しかった!  各先生のカラーがくっきり、楽器が異なるのかと思う程、音色の多様さに驚きです。 松下先生の体全体から醸し出される少しアンニュイな雰囲気(笑)、音はどこまでも繊細で憂いを帯びた音色に引き込まれました。 ソロ、デュエット、トリオそれぞれに面白さというか曲によって向き不向きもあるような気もします。  セゴビアにも触れる事ができたし楽しかった。
    今、自分の部屋でI’m a stranger here myselfを聞きながらメモを書いています! 1曲目から心が安らぎます。 現役時代には決してなかった姿です(笑)
    有り難うございました。 また出来の悪い生徒を宜しくお願いします。どうもギターよりも先生の話しが面白くて。。。。。 

    • ryuji より:

      Takao Yoshimoto さま
      いつもありがとうございます。お楽しみいただけたならよかったです。お客様のご感想もさまざまですが、楽器のキャリアと関係なくやはり人生の先輩方のお言葉には深みや重みがあり、ハッとさせられるものが多いです。
      「ソロ、デュエット、トリオ」それぞれ面白さがあり、曲によって確かに向き不向きもありますね。
      お客様が楽しめるものと自分が楽しめるもののあいだに立って活動を続けてゆきたいです。
      これからもどうぞよろしくお願いします。

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