芸術の秋である、、、。
各地の音楽教室はこの時期に発表会を開催するところも多い。
日頃のほほんと通っている生徒さんたちも、発表会が近づくにつれ目が血走ってくる。
(いえいえ、あなたのことではありません、多分、、、、笑)
そしてこの時期生徒さんたちから毎年のように受ける質問がコレである。
「どうすればアガらないんですか?」
昔はこう答えていた。
「死ぬしかないですね。」
アガる、というのは生きてる証拠である。死んでしまった人にはアガる事すらできない。
皆、発表会でアガりまくって“生きてる喜び”をかみしめようじゃないか、、、。
どうも生徒さんたちの多くは誤解している。
プロフェッショナルは舞台上で緊張しないと思っている。
お客にそう思わせるのもプロたるものの条件の一つかもしれないが、本当のところプロだって
ほとんどの人が緊張しているのである。私自身、手はしょっちゅう震えるし、私の仲間でも
むかし本番前によく吐いてる奴がいた。マリア・カラスも本番前の舞台袖でしょっちゅう
震えていたらしいではないか、、、。
ひと頃は「いかに舞台上で普段のようにリラックスするか」を追及していたが、なかなか
思うようにいかなかった。舞台上でアガるか平常心かは、当日舞台上に立ってみて初めて
わかることなのである。ミュージシャン向けに書かれた“あがり克服本”も私には効果がな
かった。「“緊張”と“アガる”ことは違うんだよ。」と言葉の定義にこだわる人もいるが、
それが実践面での緊張緩和につながる事もなかった。
そこである時期から発想を変えてみた。
「いかに舞台上で普段のようにリラックスするか」ではなく、「いかに緊張した状態で弾
けるように準備しておくか」
つまり“舞台上でのリラックス”を求めるのでなく、“舞台上は必ず緊張する”という前提のもと
それに向けて準備をするのである。
この発想の転換は少なからず効果があった。問題は日頃の練習で如何に緊張感を作り出すかに
かかっている。以下その方法。
①「本番時での服装で練習」
*靴の有る無しも結構フォームに関わってくるから要注意
②「一日一回だけの本番をやる」
*事前のウォーミングアップなしでやること
*演奏前は5分ほど舞台袖にいるつもりで、身動きしない状態に慣れておく事
*録音、録画する
*時には家族、友人を巻き込んで“ジャイアン・リサイタル”状態にする
*演奏後ミスをチェック
*演奏場所や座る方向を毎回変える(演奏場所を固定すると安心感や慣れが生じる)
*演奏開始時間を決めておく(時計を見て秒針が12ジャストにきたら弾き始める等)
③「一曲につき三つの異なるテンポ設定で表現できるようにしておく」
*自分が本番で弾きたいテンポ、それより速めのテンポと遅めのテンポ
これだけ実践できれば「家で何も考えずただダラダラと練習」するよりは10倍は緊張して
やれるであろう。繰り返すけど要は「緊張してても弾ける自分作り」を目指す事かな、、。
「人前で一切緊張しない」ことを自慢げに語る人を時々見かけるが、そういう方は人として
必要な繊細さが欠けてらっしゃる可能性があるので逆に要注意である(笑)。
もし人前で演奏して仮にアガッても、そんな自分を決して「不甲斐ない」などと思っては
いけない。本来それが当たり前のことなのだから。
舞台に関して私がいつも心がけている事がある。
「練習時のミスは徹底して原因を探り解決するが、本番当日だけ、その日一日だけは自分
にミスを許してあげること、その一回の本番だけは自分に対して寛大である事」である。
その日の音楽は、その日(前の日ではなく)にその場(人々のまなざしの中)で組み立てて
ゆくものである。終わったら振り返らぬほうがよい。それがひどい演奏であろうと素晴らしい
演奏であろうと、、、。
2013.9.25.
季節的(?)な話題
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いらっしゃいますね…全然緊張しませーん♪と語る方。
そういう方に限って、本番でものすごいミスを平然とされますが。
しかし。私も昔、どうしようもないアガリ症で、しょっちゅう思うように弾けなくなってました。見かねた先生が、一言「3割よ、3割も出せたら上出来」と言われてから、肩の荷がスッと下りた気がしました。
プロ野球選手の打率と同じなんだなぁと思ったら、納得しました。
今も、いいとこ見せよう根性を戒めるため、たまに自分に言い聞かせてます。
スポーツ選手ってすごいですね。フィギュア・スケートなんてテレビで観ててこっちの方がプレッシャーで気が狂いそうになります。決して人ごととしては見れないですね。
僕の場合コンサート本番でメンタル面が良好な時は「弱い音」を自信を持って弾けます。メンタル面があまりよろしくない時は知らず知らず力が入り過ぎていて、気がつくと全部強く弾いてます。それが僕の場合の「本番でのメンタル状態」をはかる目安のひとつです。