唐人町ギター教室では、楽譜が読めない初心者の方からプロを目指している上級者まで、現役プロミュージシャンが丁寧に指導致します

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レオナルド・ブラーボと仲間たち

 
去る9月19日(土)唐人町ギター教室の主催イヴェント『レオナルド・ブラーボと仲間たち
~ギターで描くラテン・アメリカの世界~』を無事終了することが出来た。
コロナ感染の危機が去らない状況の中、ご来場くださった多くのお客様に心から感謝したい。
 
 
コンサートの準備には通常4カ月から半年ほどの期間を要するが、今回はコロナ感染報道
真っ只中からの準備スタートとなった。使用会場が公共施設ということもあり、大変数多くの
項目からなる誓約書にサインをした。非接触型体温計、消毒液、マスクなどの準備は主催者に
義務化されている。入場者リストの管理、客席スペースの確保はもちろんお客どうしの会話の
禁止、、、全てが主催者の責任である。それらの責任を突きつけられたそのうえで、今回出演者
でもある主催者は、笑ってその場に立ち続ける必要があった。
 
 
ブラーボ氏の演奏の素晴らしさについてはここであらためて紹介するまでもないが、今回の
企画は、彼と長年デュオチームを組んで活動している池田慎司氏の存在が無ければ、とても実現
できなかった。
コンサートはレオナルドの繊細さと力強さが共存するみごとなソロ演奏で幕をあけた。
3曲のソロに続き、池田氏との成熟したギターデュオによるアルゼンチン音楽の美しく豊かな
世界が、ソロとは別の扉をひらいた。時間をかけて熟成されたお二人のギターデュオは、もはや
ひとつの究極の形を成していると言ってもよい。
 
 
休憩の後レオナルドとわたしのデュオ。池田氏とのすばらしいデュオの後なので、少しだけ
ちがう傾向のラテン音楽を打ち出してみた。
そしてプログラム最後のギタートリオは、今回レオナルドを主軸にしていることで圧巻の演奏を
ステージ上で体験することが出来た。池田氏のキレ味もレオナルドと居ることで、いつも以上に
際立っていた。
”自画自賛””手前味噌”と言われても構わない。
今回ばかりはステージで我々が感じているたのしみ”そのまま”が、客席に伝わったと確信して
いる。
アンコールはレオナルドがソロでしっかりと閉じてくれた。
 
 
コンサート開演前、お客様にとって久しぶりのコンサート会場、ということもあってか、皆様
楽しそうに再会を喜んだり、マスク着用で会話をされていた。
本来だったら主催者のわたしには、それらに注意を促し、止める義務が会場により課せられて
いた。
だがその様子をじっと見ているうち、皆さんがコンサートに求めているものは決して
「黙って開演を待ち、演奏を聴いたら、無言でハイさようなら」
などということではない、すなわちコンサートとは、音楽を聴くためだけにその場にいるのでは
ないのだ、この状況もたいせつなたいせつな”コンサートの一部”なんだ、、、とあらためて
確信した。
これを否定、排除してまでコンサートを開催する意味がどこにあるのだろうか?
 
 
誓約条項を徹底できなかったわたしは主催者としては失格かもしれない。
だが開演前の会場のその様子を見ていて、むしろ
「これだよ、これがコンサートだよ!」
という気持ちが溢れてくるのを、私には抑えることができなかったのである。
 

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“レオナルド・ブラーボと仲間たち” への5件のフィードバック

  1. S.Hongou より:

    先々代の、中村勘三郎さん(今の勘九郎さんのお祖父さま)が、
    お客様がパーマネントをあてて綺麗な服を着て、楽しそうに幕間の話をなさるのも含めて歌舞伎なんだよ、舞台なんだよ。
    まさしく、そんな、天晴れなステージでした。
    ありがとうございました。

    • ryuji より:

      S.Hongouさま
      会場の件などいろいろとお世話になりました。
      いいミュージシャンとステージ御一緒すると、精神がシャキッとします。
      (今日は反動でダラッとしてます)

  2. 大前 幸子 より:

    松下先生お久しぶりです。
    「楽しそうに再会を喜んだり、マスク着用で会話をされていた。
    本来だったら主催者のわたしには、それらに注意を促し、止める義務が会場により課せられていた。」
    「コンサートとは、音楽を聴くためだけにその場にいるのではないのだ、この状況もたいせつなたいせつな”コンサートの一部”なんだ、、、とあらためて確信した」
    本当にその通りですよね。
    最近リモート演奏もたくさん聴いておりますが、どんなに素晴らしくても何か物足りなさを感じるのは、その場にいてその場にいる方々と共通の会話を交わしたり、拍手をしたりという楽しさを味わえないということが大きいと感じます。
    また松下先生の演奏を生で聴けますことを楽しみにしております。

    • ryuji より:

      大前 幸子さま
      ご無沙汰しております。コメントいただき有難うございました。
      おそらく《リモート演奏》《オンライン配信》はおっしゃるように「けっして生コンサートの代用にはなり得ない」とわたしも思っています。
      ただ一方で、それらでしか実現できない”なにか”もあるのではないかとは思います。
      そこは現在みんなで試行錯誤中、、、といったところでしょう。
      CDと生演奏もやはり違う、、、にもかかわらず《録音芸術》というものは、確かに存在していますしね。
      レコードやCDがなければ、わたしはセゴヴィアやイエペスの演奏も一生聴くことは出来なかったでしょう。
      私も含めて音楽家(演奏家)というものは、コンサートの良し悪しの尺度を「その日の演奏の良し悪し」に求め過ぎだと常々思っています。
      演奏家としてそこに全力を注ぐのは当然のことではあるのですが、それだけで成り立っている訳ではないという自覚は常に持ち続けたいと思っています。

      • 大前 幸子 より:

        オンライン配信は生コンサートの代用と考えると物足りなさを感じますが、別のものと考えると、遠くて普段なかなか聴けない演奏家の音楽に触れることができる、コンサート会場に行けないけど家でなら聴ける、とかのメリットがありますね。
        その方にしかできない配信、映像を楽しませていただきます。
        お返事ありがとうございました!

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