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『アランブラの思い出』の思い出

 

最近 街を歩いていて思ったのは「若いひとがやたら多いな」ということ。しかしふと冷静に考えると それは若いひとが増えたというよりも たんに自分が歳をとっただけだということに気が付いた。まったくなんということでしょう・・・

歳をとるごとにふり返る過去の思い出の分量も増えてくる。これがなんだかけっこう重たい。こんなものは持ち歩かず 思いだすたんびに吐き出していったほうが身体の為にもいいんじゃなかろうか。でもあまりそれをやっていると今度は若いひとから「また年寄りの昔話が始まった」と煙たがられるにちがいない(昔の自分がそうだったように)。まったくどうすればいいのでしょう・・・

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『アランブラの思い出』を初めて聞いたとき、自分にこんな曲弾けるんかいな と感じたのは覚えている。ラジオから流れてきたペペ・ロメロの演奏。確かギターを始めて3~4年くらい経ったころだと思う。そしていまだ弾けないままギター人生を終えようとしているが別に悔いはない。何故ならほかに弾きたい曲はヤマほどあるのだ。ことアランブラに関してはひとさまの演奏を聴くだけで充分みたされる。先日も北九州で池田慎司のすばらしいアランブラを聴いた。それでいい。

現地スペインでは、日本のようにアルハンブラとは発音しない。アランブラだけで既に宮殿というニュアンスが含まれているので”アランブラ宮殿”とことさらに言う必要もない・・・という話をスペイン帰りの人から聞いたことがある。

話は違うが 昔の『現代ギター』ではブローウェルは”レオ・ブロワー”と表記されていたし、J.W.デュアートもその表記は長らくJ.W.デュアルテで通っていた。それらは私に断わりもなくある日を境に突然変わったりする。まるで新紙幣のように馴染むのに時間がかかる(今回のヤツったらまるで《こども銀行》にみえちゃうのよ)。これも歳のせいか・・・

そういえば むかし来日したイェラン・セルシェルに あるひとが「あなたの名前の現地発音は?」と尋ねた。当人は即座に発音したが 私の耳にはこう聞こえた。「ゴラン・ソルショー」

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この話は以前ブログに書いたかもしれない

あれはわたしがフランスに留学する半年くらい前、そう22か23くらい。NHK福岡の番組「夢カクテル」で『アランブラの思い出』を弾かないか?というお仕事をいただいた。弾けないなりに必死で練習し、収録当日ギターを抱えて福岡市六本松にあるNHK福岡のスタジオに向かった若き日のわたし。あの日の出来事は今でもはっきりと覚えているくらいカルチャーショックだった。

司会進行の原田アナウンサー、当番組のレギュラーであり福岡を代表する名バーテンダー倉吉さんらと台本を見ながら打ち合わせ。とにかく右も左もわからない世界なので控室でおとなしくしていたら「松下さん、カメラテストです」と呼ばれ、言われるがままスタジオへ。ところが自分が弾くセットを見てびっくりしたわたし。いや、セット自体は秋の落ち葉のなかに真っ白な椅子が置いてあるイメージで ライティングもいかにもオサレなのだが その広々とした同じ空間に料理番組のセットとニュース番組のセットがあり しかも料理番組のセットでフライパンがじゅーじゅーいって空気中いっぱいバターの香り。そうか、、、テレビではニオイはわからないもんな。

スタンバイしているわたしにディレクターさんがキューを出した。そう『アランブラの思い出』である。真面目な顔をして必死に弾いた。カメラテストの演奏はなんとか無事におわった。とりあえずホッとしている私にそのディレクターはなんとこう言ったのである。「はい、ありがとうございまーす。じゃ、本番はこれより5秒速くでおねがいしまーす」 な、なんだと~?!

ちなみにわたしは事前にミュージシャン仲間から聞いていた。NHKというところはよほどのNGでない限り 絶対に録り直しはしない、と。ああ、なんということでしょう・・・

そしてむかえた本番の収録。鬼ディレクターのキューとともに犬のように飛び出した若き日のわたし。途中いくつか傷を負い 手負いになりながらも なんとか私の体はゴールのテープを切ることができた。気になるタイムは?

カメラテストの時より7秒縮めていた(その分お辞儀が長く映されていた)。やったぜ、自己ベスト更新だ。でも、これって音楽か?ただの作業じゃないか?

ちなみにわたしは事前にミュージシャン仲間からもうひとつ聞いていた。NHKというのはN(日本)H(薄謝)K(協会)だと。そしてその日のギャラはたぶんNHKの文字が入ったボールペン一本だ、と。ああ、なんということでしょう・・・

そして帰りがけにいただいた袋を開けると その中身はNHKの文字が入った懐中時計だった。ボールペンよかいいよな・・・

 

2024.09.04.

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