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ポンセ・イヤーに思うこと(疑似バロックの現代的あり方について)~その1

 
近代メキシコの作曲家、マヌエル・ポンセ Manuel Maria Ponce (1882~1948)は、スぺ
インのギタリスト、アンドレス・セゴヴィア(1893~1987)の為に数多くの作品を残したが、
没後七十年となる今年は、年後半に向けても様々な《出版物》《録音》《企画演奏会》が世に
発表されることであろう。
 
 
ギター曲に見るポンセの作風というものはスタイルとしていくつかあるが、大まかに分けると
「バロック的なもの」「古典的なもの」「ロマン派的なもの」「近代的なもの」の他に
「民族主義的素材にフランス近代和声を散りばめたもの」などもある。
だが基本的にはこの時代の多くの演奏家、作曲家がそうであったように非常にロマン
ティックな作風スタイルであった。なお調性のワクの中でいろいろ実験することはあっても、
無調に行くことはなかった。
 
 
ちなみに今回言及したいのは、数多いポンセ・レパートリー(ギター曲)の中でも、曰くつきの
”疑似バロック”作品についてである。
『古風な組曲 Suite Ddur(1931)』『イ短調組曲 Suite Amoll(1929)』の他、単品で伝
えられてる『前奏曲 Prelude Edur(1929)』『バレット Balletto(1929)』などは、ご存
知の方も多いように A.スカルラッティ、S.L.ヴァイスなど、バロック時代の作曲家の作品が
”発見された”という名目でセゴヴィアのコンサートにおいて発表されたが、その内実はあくまで
ポンセのオリジナル作品である。
 
 
セゴヴィアとポンセによるそのような共謀(いたずら)が行われた動機は様々あるだろうが、
とりあえず考えられるものとしては、、、
 
①当時ヴァイオリニストのクライスラーがそのようなことをやっていたのを見て、同じような
いたずらをしてみたくなったセゴヴィアがポンセにもちかけた。
②セゴヴィアとしては一晩のコンサートプログラムを、一人のお気に入り作曲家(ポンセ)の
作品で占めるよりは、時代や作曲家に外見上のヴァラエティを持たせたかった。
③専門家の目を欺けるほど、バロック音楽に精通した作曲技法を駆使できるかどうか試して
みたかった。
 
などではなかろうか(あくまで推測)。
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ポンセ・イヤーなどとは関係なさそうであるが、近頃レッスンで『前奏曲』『バレット』を
聴かせて頂く機会が不思議と多い。
そうした中で考えれば考えるほど、これら”疑似バロック作品”に対するアプローチはふたつの
選択肢があるのを感じる。
ひとつは、【現代における古楽的認識に基づいた演奏】
もうひとつは、【作曲当時(近代)のヨーロッパに蔓延していた、ロマンティックアプローチ
に基づいた演奏】
 
前者は現代の古楽奏者的観点で作品分析し、アーティキュレイトしていくやり方。後者は
リョベート、セゴヴィア、バリオスのような演奏スタイルで作品にアプローチしていくやり方。
あなたはどちらだろうか?
 
というわけで、次回はひさびさに暴論的持論を展開の予定、、、。
 
(つづく)
 

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