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美しいはずの日本人(その2)

 
~加藤参謀長は、なお長官公室にいる。電報の翻訳文をみせたあと、蒼白のひたいを光らせて、
「艦隊に出港を命じます」
と、東郷の了解をもとめた。
「うん」
東郷が、うなずいた。東郷が民族の興亡を決すべき運命の戦いへスタートするにあたって、
意思表示したことといえばただそれだけだった。かれはよく整った品のいい顔つきをしていた
が、その表情からさきほどの喜色が消え、ふだんの東郷の顔つきにもどっていた。ちょうど陽の
よくあたる場所で田の面をながめている老農夫の顔のように平凡でしずかで、すこしの劇的要素
もなかった。日本人は情景が劇的であればあるほどその主観的要素を内部にしまいこんでしまう
ところがあり、東郷のこの光景は能に似ていた~
 
「坂の上の雲(八)」司馬遼太郎著[文春文庫]より
 
 
 
日本人がその歴史の中で初めて“国家”“国民”という意識を持つにいたった頃の人間像が描かれた
大作「坂の上の雲」。
そのなかで私にとって非常に印象的な場面のひとつが、東郷平八郎がロシアのバルチック艦隊を
迎え撃つべく、国家の命運を背負って連合艦隊に出港を命じる上記の場面である。
さまざまな時代を通じて“日本人”という生きものを愛情をもって眺め、描いてきた司馬さん
ならではの、淡々としながらも深みのある描写である。
 
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~ヨーロッパじゅうで、王室のような扱いを受けたんだ。そんなふうにしてくれたら、すごい演奏をしないわけにはいかない。ブラジル、日本、中国、オーストラリア、ニュージーランドでも同じような扱いを受けた。他のどこでも受ける、敬意のこもった扱いを受けられない唯一の国が、アメリカだ、クソッ~
 
~オレのお気に入りの場所は、パリ、リオ、オスロ、日本、イタリア、ポーランドだ~
 
~オレにとって世界で最高の女性は、ブラジル人、エチオピア人、日本人だ。オレが言いたいのは、美しさ、女性らしさ、教養、立ち居振る舞い、態度、男に対する敬意、すべてを総合した評価だ~
 
「マイルス・デイビス自叙伝II」マイルス・デイビス/クインシー・トループ著[宝島社文庫]より
 
現在の日本をみて、マイルスがここまでの評価をしてくれるか甚だ疑問である、、、。
外国人の“振る舞い”をコピーするのをやめると同時に、ファッションに日本人っぽさをとり入れ
るだけの浅はかな現状も何とかならないだろうか。
夏に若者の間で浴衣ファッションが流行っているのを「若者達による日本文化の見直しがすすん
でいる」と分析する大人はもはやアホとしか言いようがない。
 
 
ある知り合いのエピソードを最後に、、、
 
その人は職場で部下に対し、一切「腹を立てない」ひととして一目置かれる存在である。
まわりから「部下の失敗や態度に対し、腹が立つことはないんですか?」と聞かれた際、
そのひとはこう答えたそうである。
「意見や助言を言うときにべつに腹を立てて言う必要はないんじゃない?」
 
美しい日本人の一例として、私自身見習わなければと思った。
 
(おわり)
 

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