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小澤敏也さん(その1)

 
去る11月18日22時11分、日本を代表するパンデイロ奏者でありラテンパーカッション
奏者である小澤敏也さんが膵臓がんのためお亡くなりになった。ご病気で演奏活動を休止されて
いる事はうかがっていたが、がんのことは知らなかった。5/13に告知を受けられ、周りに
心配をかけたくないとの思いから公表する事を避けたらしい。
亡くなられてからこの一週間、毎日小澤さんのことばかり考えている。知り合ってからまだ
三年、共に踏ませていただいたステージは九回、の私でさえそうなのだから、もっと長いお付き
合いをされた方々の心の重さは私には到底推し量る事ができない。
 
 
 
2010年夏の終わりだったと思う。神奈川県秦野市にある木下尊惇氏のご自宅にお邪魔した時
のことだ。同市で木下氏が企画し、大成功のうちに幕を下ろしたラテンアメリカ音楽コンサート
「しあわせの架け橋」の映像を見せてもらった私は、あまりの感動と興奮で声も出なかった。
木下氏を筆頭に、総勢10名からなるラテン音楽のスペシャリスト達によるきらびやかな
饗宴、、、。信じられないクオリティの高さ、そして面白さ、、、。中でも特に印象に残った
のは、コンサートの最後を締めくくるアンコール曲「レヴォルタ・オロドゥム」でリード
ヴォーカルをとっているパーカッショニストの独特の歌声だった。それが小澤さんだった。
 
 
その後木下氏を通じて「しあわせの架け橋」に出演していたブラジル音楽のグループ“ピカ
イア・パンデイロ・スペシャル”のリーダーでありトランペット奏者である渡辺隆雄さんとお知り
合いになるチャンスを戴けた。まさに天にも上る気持ちだった。渡辺さんは言った。
「グループのツアーで今度福岡に行きます。」
 
 
数ヵ月後、福岡ジャズライヴハウスの老舗「ニューコンボ」に“ピカイア・パンデイロ・スペ
シャル”はやってきた。メンバーはリーダーである渡辺隆雄さん(トランペット、パーカッ
ション)山田“やーそ”裕さん(7弦ギター)小澤敏也さん(パーカッション)の3人に加え、
サックスの清水賢二さんがゲスト出演された。開演前に当時はまだ珍しかった“かりんとう
饅頭”を差し入れすると、受け取った渡辺さんが一言「“甘いもの”は小澤の主食です。」と
おっしゃったのが印象的だった。
その後ようやく初対面の挨拶を交わした。私の中ではあの「レヴォルタ・オロドゥム」の
小澤さんである。心の中で緊張している私に小澤さんは言った。
「いや~差し入れありがとうございます。ところで下世話な話で申し訳ないけど、、、、
あれ美味いっすネエ!」
「、、、、、、、、、、。」
 
 
その夜のライヴはあまりにも素晴らしかった。メンバー全員が輝いて見えた。
「あのひとたちと“同じステージ”に立てる自分になりたい、、、。」
帰り道、私の中でひとつの目標が定まった。
いつになるかわからないが、追いかけてゆくには充分に魅力的な夢であり目標だ。
 
しかしそのときの私の予想に反して、意外にも早くそれは現実のものとなっていった。
 
(つづく)
 

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