たまたまでもないと思うが、その”すごいひとたち”はクラシックギタリストではなかった。
フォルクローレの木下尊惇さんとジャズの田口悌治さんとは今から約20年前のほぼ同時期に
出会う事が出来た。
木下さんの演奏に触れた時、おなじクラシックギターという楽器を使っているにもかかわらず、
演奏から何故こんなにも土の香りがするのか不思議というか衝撃だった。木下さんは未熟な私を
ケーナの菱本幸二さん、ピカイアのメンバー、そして高橋悠治さんのような音楽家のみならず、
福島のご友人をはじめ本当にたくさんの方々と繋げてくださった。
そういえば高橋さんのピアノ演奏からも、木下さんとおなじごつごつした”土の香り”が感じ
られる、、、
そしてやはり同じ時期、ヴァイオリンの荒田和豊さんの御紹介でフルートの故齊藤賀雄先生の
アンサンブル講座を受け始めた。荒田さんからはオーケストラや室内楽のアプローチを学び、
齊藤先生からは”音楽を活き活きとさせるには?”というアプローチを目の前で実際に示して
いただいたことが非常に大きかった。
田口さんからは木下さん同様、現在も本当に多くのご示唆を頂き続けているが、過去その中の
ひとつに私の意識を決定的に変えるお話があった。
田口さんがお若い頃体験された”あるセッション”の話だ。
その日あつめられたメンバーのなかで明らかにベースのひとのリズムがおかしかった。演奏中
そのひとに向けて田口さんはずっと「これが正しいリズムだよ!」と示すようなプレイを
続けた。すると合い間の時間に別の先輩から田口さんの方が諭された、というのだ。
先輩曰く「あいつよりもお前の方がリズムが100倍いいのはよくわかる。だけどあいつも
”今日のメンバー”のひとりなんだ」
意識を変えた田口さんは、演奏する時にそのベーシストのリズムに少しだけ歩み寄ってみた。
するとそれまで「原因はわからんが、なんかノリにくいな」と感じていただけのベーシストが
「おっ?なんか知らんがさっきよりノリやすい」という感じで、その場のアンサンブルが
”いい空気感”になった、、、というのだ。
このとき田口さんは学ばれたそうだ。
「”正しい演奏”をやるのではなく、”その時そこに居るメンバーでのベスト”を目指すことが
大切だということですね」
(つづく)
意識の変遷(その2)
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