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”ひびき”について思ういくつかのこと(その3)

 
前回お話したことは文系人間の思い描いた、あくまで個人的な”イメージ”の話なので、実際
なんの科学的根拠もないフィクションである。
しかしいつの日か”納得のいく裏付け”が欲しい、、、。
 
 
”ひびき”に関する三つの個人的疑念のなかで、今回挙げるふたつめは「決して個人的妄想では
ないはずだ」と信じている。
では、そのふたつめの話、、、
 
《コンサート当日に楽器及び会場の鳴りが徐々によくなっていく》
 
”なにそれ?初めて聞いた”
という方もいらっしゃるかもしれない。
でもこれはクラシックのコンサート会場では、時折耳にする言葉のひとつである。
 
 
つまりどういう説かというと、例えばクラシックのコンサートが前半から後半に進むにつれ、
楽器そのものの響き方すなわち反応が次第によくなっていく、、、
のみならず”会場そのもの”の響きの反応が次第によくなっていく、、、という話。
シチュエーションとしては、コンサートが後半にさしかかった頃、会場の後ろのほうで聴いて
いた主催者、楽器(制作業・販売業・収集)関係者、時には音響関係者といった人たちが
「いやー、後半になって楽器がどんどん鳴ってきた」
「ホールの鳴りが後半どんどん良くなってきましたね」
といった類いの発言をする、あのことですよ。
あれを耳にするたびおじさんは、まだおにいさんの時分から内心思っていた。
「ほんとかよ?」
 
 
たしかにクラシックギターのホールでのソロ・コンサート冒頭、音が遠くて聞き取りにくいと
感じていたのが、コンサートが進むにつれ、次第に聞こえ方に変化を感じることは私もある。
が、それは日常的な外の雑踏からコンサートの音に自分の耳が次第に慣れてきたということで
あって、よしんば楽器の鳴りがよくなったとしても、”よく聞こえ始めた要因”としてのそれは
ほんのわずか、ましてや演奏の響き(振動)に会場そのものが共振し始め、会場そのものの鳴り
がよくなると主張する人は、よほど”けもの”並みの聴覚をもっている稀な方としか思えない。
そのひとたちはコンサート当日、演奏家がホールにおいてすでに何時間もかけてリハーサル
およびゲネプロをやっているという事実を忘れているのだろうか?
 
 
お客さんが会場に入ることで響きそのものは大きく影響を受けるが、それが徐々によくなって
いくというのは、文系の私にとってもあまりに幻想(あるいはオカルト)じみて見えるし、
お客さんの耳が徐々に会場のひびきになじんできて、音を聞き取りやすくなると考えるほうが
違和感がないのだが、どうだろう(ものを投げないでください!)。
 
 
もちろん私が述べたこともすべてにおいて個人的想像であり、なんの科学的裏付けもない。
だが、主催者、楽器関係者、音響関係者のひとたちが「後半ホールが鳴ってきましたねえ」
「楽器がどんどん鳴ってきましたねえ」と景気づけのように発言し、一般の人たちもそれに
対し「なるほど、耳のいい人たちにはそういう類のことまで感じとれるものなのか」「自分にも
そう聞こえたし、もしかしてオレって耳がいい?」などと感じている状況を目の当たりにするに
つけ、私は昔から思ってきたし今現在も思うのである。
「ほんとかよ?」
 
(つづく)
 
2020.11.3.
 

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“”ひびき”について思ういくつかのこと(その3)” への2件のフィードバック

  1. 木下尊惇 より:

    初耳でした(笑)
    ホールの響きに耳が慣れてくるのとともに、前半の緊張感から解き放たれた演奏家が、上手く楽器を鳴らせるようになった可能性はありますね。

    • ryuji より:

      木下尊惇さま
      そうなんです。
      今回それを書き忘れていました。ありがとうございます!
      コンサートで無駄な力が抜けるといいなといつも思っていますが、なかなかに難しいです。
      はじめの一曲で抜ける時もあれば、5.6曲弾いても抜けない時もあります。

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