唐人町ギター教室では、楽譜が読めない初心者の方からプロを目指している上級者まで、現役プロミュージシャンが丁寧に指導致します

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”コンサート”とは違うなにか、、、

 
怒涛の本番ラッシュ月間である7月が始まった。
こういう時はたえず”攻め”にまわらないと乗り切れないことは経験上知っている。
”アニメソングの帝王”と謳われた水木一郎がかつて河口湖ステラシアターにて『1000曲
ライブ』を敢行する前、24時間ライブを乗り切った吉田拓郎にアドヴァイスを受けに行った
ところ、「ぜったい水木、最初からワーっていった方がいいって」「セーブするのはだめだよ」
と言われて最初からボーンといったらしい。私の心に強く残っている”世の中の先輩ミュー
ジシャンのエピソード”のひとつである。
 
 
怒涛のラッシュを攻め気でいく決意をしている私だが、取り敢えず今日ひとつ終えた。
福岡市内のちいさなギャラリーで開催中の、知り合いの作家さんの個展会場でのソロ演奏で
あったが、せっかくの機会だからいつも出来ないことをやろう、、、と挑戦してみた。
四角い部屋の壁四面に、現在全国的に注目を集め始めている作家サトウアキコさんのキリガミ
作品が展示してあるのだが、部屋のど真ん中に演奏の場をセッティングし、私の周り
360度をお客様がイスで囲む、という形。これが第一の挑戦。
 
 
そしてあらかじめ配布したプログラムに以下の文面を挿入。
~本日の演奏は通常のコンサート形式とはちがい、演奏中どうぞご自由にお過ごしください。絵や作品をご覧になりながら、ご自由に歩き回られたり、あるいは腰掛けられたり、、、。演奏中ものおとをたてて頂いても一向に構いません。曲間の拍手もどちらでも結構です。曲は下記の順に演奏いたします。【エピローグ】の前のみ、奏者からみなさまに御挨拶差し上げたいと思います。~
そのようにお断りし、いつものコンサートにはない”お客さんの自由”を与えたのが第二の挑戦。
 
 
それぞれの挑戦が本日どのような結果になるのか、まったく読めなかったが、順にレポート
すると、まず第一の挑戦に関しては、、、
目の前のお客さんの数は減るのだが、後ろからお客さんの存在なり視線なりを感じることに
慣れてないので、いつもとは違う緊張感があった(笑)。
お客さんの視点からすれば、視線の先に演奏する私が居て、その先に向かい合って座っている
別のお客さんが見え、さらにその先の壁に展示してある作家さんの作品が見える。といった
非常に多層的な空間を感じながら聴いたはずである。
あと通常のコンサートでは、奏者の側面や後姿を見ながら聴くことのない”ギターという楽器”
で、そのような体験をしていただけたのは珍しいことだったかも、、、。
 
 
第二の挑戦。これは”コンサートのお客さん”が日頃与えられない自由を手にした時、どういう
行動をとるのか、あるいはとらないか、とれないか、、、をみてみたかった。
”通常のコンサート”という形式では、お客さんはある決まった慣習的振る舞いをすることで
守られている部分がある。いわば”作られた聴衆というスタイル”を守ったり演じたりすることで
あたかもその場に居る資格を得ているかのようである。
もちろんコンサート慣れしているお客さん達に、いきなり”普段はない自由”を与えたところで、
即座に反応できる人はなかなかいない。
ただ大切なのは、お客さんがその自由を手にしていることによって「今動こうか動くまいか」
「拍手しようかしまいか」などの葛藤が生じることで、これはその場に対し、通常よりも
能動的に参加している、と言えるのではないか。たとえ今回のように結局だれひとり動かな
かったとしても、、、である。
こういったことは二回三回と回を重ねて初めてなにかが現れてくる類のことだと思うし、機会が
あったら是非また挑戦してみたい。
 
 
第三の挑戦は、いつもお喋りの私がMCを一切とらなかったこと。
それによって何が起こるのか見てみたかった。
今回はプログラムが進むにつれ、その沈黙がどんどん重たくなっていき、次第にお客さんが
協力し合って、そのサイレンスを大切に尊重してくださってるような空気感が出来ていった。
そうか、山下和仁氏がMCをとらず、コンサート中、毎回蓄積していってるのはこれか!
未熟な僕には重いなあ、、、(笑)。
 
 
第四の挑戦は、初めて弾き語りをしたこと。
一曲だけですよ、、、。被害者の会が結成されなければいいけど、、、(苦笑)。
 
プログラムは以下の通り。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
*【プロローグ】ゆりかご(F.モンポウ)
*ガヴォットーショーロ(H.ヴィラーロボス)
*3つのカタルーニャ民謡
~『商人の娘』『アメリア姫の遺言』『盗賊の歌』(M.リョベート編)
*ヴェネズエラの童謡の主題による変奏曲(A.ラウロ)
*悲しきミロンガ(A.ユパンキ)
*エストレリータ(M.M.ポンセ/A.ユパンキ編)
*ワルツNo.4(A.バリオス)
*青いユニコーン(S.ロドリゲス)
【エピローグ】ラスト・ワルツ(L.リード&B.メイソン/武満徹編)
 
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“”コンサート”とは違うなにか、、、” への8件のフィードバック

  1. masami より:

    新しい挑戦、その場を想像して見ました。動くにも勇気いりますね。やっぱり最後まで演奏に集中して聴いていそうです(笑)与えられた自由をかんじながら、、

    • ryuji より:

      masamiさま
      コメントありがとうございます。
      いままで積み重ねられてきた《コンサートという形式》そのものを決して否定はしないし、それはおそらくこれからも続いていくものだとは思います。
      ただ、「コンサートのつもりで出かけていったら、結果”コンサート”とは違うなにか、、、によって音楽やその場の空間とひとときを過ごした」という類いのものもやれないかなあ、というのが今回の試みでした。”遊び”と言ってもいいかもしれません。
      演奏はいささか”おボロ”でしたが、ギャラリーの雰囲気や作家さんの素敵な世界に、そしてお客様にずいぶんと支えて頂いてるのを演奏中ずっと感じていました。

  2. S.Hongo より:

    今回も素敵なコンサートありがとうございました。
    プログラムの一文を拝読したとき、ちょっと戸惑いましたが、いつも通り、椅子に座って聞く、を選びました。
    不思議な空間。
    演奏者を取り囲む、他の方のお顔、表情が見え、サトウアキコさんのお手による、青いユニコーンのモービルが、ゆたりふわりと揺れている。
    プログラムの曲は、カードを切っていくように、次々に進む。
    拍手していいのかな? しちゃおう。
    コンサートなのに、静謐さを楽しむような、不思議な時間でした。
    弾き語り、素敵ですね。
    次回も期待いたします。
    ありがとうございました。

    • ryuji より:

      Hongoさま
      昨日もご来場くださりありがとうございました。
      「お客様ご自身の選択により”いつも通り”」というのと、「”いつも通り”にするしかない」というのの間にはやはり大きな違いがあるような気がします。
      突然の弾き語り、失礼いたしました。
      「”歌”とは、技術に長けているひとだけの特権的所有物などではない!」ということを身をもって示したかった(ほんまかいな、、、笑)。
      ギター演奏もしかり、、、ですね。

  3. ファン代表 より:

    弾き語りするなら告知してほしいな
    聴きたかった
    残念

    • ryuji より:

      ファン代表さま
      す、すみません!まだ本格導入前の試験段階なもので、、、。

  4. この度は素敵な音のギフトをありがとうございました。
    小さな空間で、先生の演奏を囲んでのコンサート。
    みなさんの心地よさそうな表情も拝見できてとても幸せな時間でした。
    ご来場くださったお客様へも先生へも
    ご挨拶もお礼もままならず大変失礼いたしました。
    またこのような展ができるように精進していきたいとおもいます。
    素晴らしい機会を本当に本当にありがとうございました。サトウアキコ

    • ryuji より:

      サトウアキコさま
      ステキな個展、三日間大変ご盛況だったようでなによりでした。
      心地よい空間で演奏させて頂き、こちらこそありがとうございます。
      これからの創作活動、ますます楽しみにしております。

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