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その時間

 

一か月ほど前のこと、ひとりの生徒さんとの会話の中で「趣味とはなにか?」という話が出た。

”趣味”の定義を調べると以下のようである。 

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趣味(しゅみ)は、以下の3つの意味を持つ。

  1. 人間が自由時間に、好んで習慣的に繰り返しおこなう行為、事柄やその対象のこと。
  2. 物の持つ味わい・おもむきを指し、それを観賞しうる能力をもさす。調度品など品物を選定する場合の美意識や審美眼などに対して「趣味がよい / わるい」などと評価する時の趣味はこちらの意味である。→#美学用語の「趣味」
  3. 人間が熱中している、または詳しいカテゴリーのこと。
  4. *職業(プロフェッショナル)として成立している範囲の事柄を趣味(ホビー)でおこなう人は、アマチュアと呼ばれる。(以上Wikipediaより)

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なるほど、そうなのね、、、。

話を聞くと、その生徒さんにとって「趣味はギターです」と言い切れないなにかがある、、、というのである。”趣味”という単語のうつわにおさまらない、あるいはおさめたくない気分というのは確かに私自身も持っている。仕事と生活の片手間に、ヒマツブシ的にやっているような軽さを、”趣味”という言葉のなかに感じてしまうのは、同感である。

とりあえずしっくりきそうな他の言葉として、ひとつ提案してみた。

「生きがい?」

「そうですね」とその生徒さんは合わせてくださり、そこでその話は終わったのだが、そのありふれた単語でもやはりしっくりこないという感触が、自分のなかに現在まで強く残り続けている。

 

ひとはなぜ”趣味”、別な言い方をすれば《一文の稼ぎにもならない時間》を持とうとするのか?

【その時間】に何を求めているのか?

 

もちろん、ひとそれぞれに答えがあり、私にわかるはずは無いのだが、【その時間】は仕事や現行の生活のなかにおいて《別の顔を持つ時間》と言えるのかもしれない。

その中でゲーム、スポーツ実践、料理、音楽演奏などの《技術向上にかける時間》もあれば、スポーツ応援、絵画鑑賞、読書、音楽鑑賞などの《自分の内部での他者との関わりによる気持ちの高揚の時間》もあるだろう。

【その時間】を、《他人には見せることのない顔》で終わるひともいるし、他者と共有するなかでさらに豊かな世界に拡げてゆくひともいる。そして、それはそのひとの自由である。

 

いずれにせよ、わたしには【その時間】を表現することばとして、”趣味”でも”生きがい”でもなく、”居場所”というものが、現時点で最もしっくりくる。他者と関われる居場所を、ひとは本能的に求めているのではないか?

その数が多ければ多いほど豊かだ、とは必ずしも思わないのだが、”居場所”をひとつも実感できないひと、あるいはひとつの居場所の人間関係にがんじがらめになってしまってるひとが、現在さまざまな事件を起こすことにつながっている気がしてならない。

すくなくとも、わたしの周りにいる生徒さんに関しては、それぞれの”居場所”を実感してもらい、【その時間】をいとおしんでもらえるよう、これからもサポートしてゆきたいと思っている。

 

2023.08.07.

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“その時間” への2件のフィードバック

  1. 村田陽子 より:

    趣味を、生き甲斐や居場所をパラダイムとする松下先生の生徒さんへのサポート、天晴れだと思いました。音楽愛好家にそれぞれの段階で、ギターを通して音楽のあり方を模索する生徒さんへの愛情と気配りを、高く評価するものです。
    そも、プロフェッショナルとアマチュアの認識は自分ではなく、他人が決めるものですがね😉

    • 松下隆二 より:

      村田 陽子さま
       
      コメントいつもありがとうございます!
      最後の一言は、自分の中に無い捉え方だったのでドキッとしました。なるほど、そう言えばそういう側面もあるのかと、妙に納得しました。新しい視座をありがとうございます。

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