日常の中で ある時ふと気づいた
最近というか ここ数年 近い距離のものばかり見ている
パソコンの画面 バスの中で読むために持ち歩いている本
目の前の楽譜 楽器に触れる自分の指、、、
もちろん普段生活するうえでは 近くを見る時間のほうが
その必要からも 圧倒的に長いのはわかる
だがそれにしても遠くを見ていない
自分の見る距離や空間は
見てるあいだ 心のスペースを そのサイズにしてしまう気がする
それが悪いわけではないが
それに気づいてからは できるだけ
遠くを見る時間を たいせつにしている
これは子供のころのほうが よく感じていた距離感
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『春が来たなら』
春が来たなら 花が咲いたら
木のかげに小さな椅子に腰掛けて
すつと遠くを見てくらさう
そしてとしよりになるだらう
僕は何もかもわかつたやうに
灰の色をした靄のしめりの向こうの方に
小さなやさしい笑顔を送らう
僕は余計な歌はもう歌はない
手をのばしたらそつと花に触れるだらう
春が来たなら ひとりだつたら
~立原道造 1914-1939 未刊詩篇より~
2022.11.11.