唐人町ギター教室では、楽譜が読めない初心者の方からプロを目指している上級者まで、現役プロミュージシャンが丁寧に指導致します

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それぞれの景色

 

前回の話の最後と すこしだけ かぶってくる内容から始めたい

 

生徒さんを見ていて 曲のどのあたりまで切り込めるかは もちろんひとそれぞれである

それぞれであるが 曲の取り組みを山登りに例えた場合 仮にその生徒さんが四合目あたりで行き詰まったとする

その時に ”さらに上に登ること”をあきらめ「あっちの山のほうが登りやすそうだし景色もよさそう」とつぶやいて下山してしまう人が多い

だが 今度の山でもやはり四合目で行き詰まることになる そしてつぶやく

「この山は自分に合っていないのではないか」

「人から聞いた話ではどうもあっちのほうに私に合いそうな山があるらしい」

またもや下山

それを繰り返すうち そのひとは次第に どの山でも”四合目まで登り詰めること”は早くなる

が、、、

 

このひとが次に何を目指すべき、、、などということは言わない

わたしは ひとそれぞれでいいと思っている

ただ もしそのひとが五合目まで登りたいという時には こうアドバイスしたい

「どの山でもいいから 今登っている山の五合目までは とにかく行け」

これができれば 下山してほかの山に登った時でも ”五合目までは” 行けるはずである

 

大変傲慢な自惚れたことと承知のうえで言わせてもらえば

わたしは六合目の景色を知っている

だからどの山でも《六合目までの登り方》については知っている

六合目までのルートや登り方に関して ひとにアドバイスすることができる

そこから上の景色は 現時点では知らないから アドバイスも仕様がない

「あのひとはさらに上を知っていますよ」と紹介することが出来るくらいである

 

《山を変えること》それ自体はもちろん悪いことでもなんでもない

だが行き詰まるポイントというのは「山を変えても変わらない」ことを知っておいたほうがよい

さらに上の景色を見たければ 今いる山に踏みとどまり 自力でルートを探すか 信頼できる人のアドバイスを 疑いなく実行してみることだ

 

わたしがクラシック界で出会ったひとのなかで

フルートの故齊藤賀雄先生 ピアノの高橋悠治さんは

どの山でも 頂上からの景色を楽しむことのできる方々だった

二日前コンサートで聴いた ピアノの小林道夫さん(91歳)も

その景色を知ってある方に特有の 佇まいだった

 

2022/03/23

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