唐人町ギター教室では、楽譜が読めない初心者の方からプロを目指している上級者まで、現役プロミュージシャンが丁寧に指導致します

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ずれる和音(その3)

 
和音はいつも少し崩すかアルペジョで、つまり一音一音ずらして弾きますが、同時に弾いたときと同じ効果を与える程度に速く弾きます(この後譜例が続く)。テンポが遅いときは、和音を通常より遅めのアルペジョにし、和音の横に()【カッコ内に縦波線のアルペジョ記号/松下註】という記号で指示することがよくあります。テンポが速くメリハリがあってギターの音を多く使う曲では、この記号が付いた和音は親指ですべての弦を力強く素早く滑らせるようにして弾きます。
~『完訳カルカッシ完全ギター教則本Op.59』23~24ページより/監修:原善伸、
翻訳:上谷直子(現代ギター社)~
 
 
カルカッシに話を戻したい。
「同時に弾いたときと同じ効果を与える程度、、、」
という言葉づかいから、本人もしくは同時代のギタリストのあいだでも、当然同時弾きはされて
いたはずである。
ただこの文章から読みとれることとして、カルカッシ本人は和音(コード)を弾く際の基本
アプローチとしてアルペジョを考えていたということは間違いない。
ただ本人が詳しく説明しているように、”アルペジョのスピード”のヴァリエーションがいろいろ
あるのだ。
*同時弾きと変わらないくらい素早いもの
*割と素早いもの
*おだやかなもの
曲想やテンポによってその中間値が無数にあると考えてよい。「どの曲のどんな箇所でも同じ
速度のアルペジョ」ではだらしない印象になってしまう。
 
 
今回のブログではアルペジョ話から少しずつずれていって、”楽器別方言”についてまで触れて
いるが、私自身の活動を通じてこのことは常に重要なテーマだと感じている。他楽器との
アンサンブルの世界をさまよう中でのみ感じられる”ギターならではのすばらしさとむずかしさ”
を、これまで味わってきたからだ。
 
 
なお私の場合、アーティキュレーションには楽器的方言を極力もちこまないようにしている。
数年前、和歌山でケーナの世界的名手である菱本幸二さんとご一緒させていただいた時、
リハーサルを終えた菱本さんからこう言われた。
「あ~、松下さんは低音をちゃんと切りますね~。ギターのひとは切らないことが多いです。」
これは決して自慢したくて書いているのではない。たとえば3/4の曲で四分音符三つのベース
を弾き続けるような場合、アーティキュレーションを付けず音価通り”だーだーだー”と弾くと、
音楽は死んでしまうのだ。もっともフォルクローレの場合、《四分音符の音価》などという概念
はなく、感触があるのみであろう。5弦の開放ラから4弦のミに動いた時、ラを止めることなく
「これがギターの方言だから」などと開き直ることはしない。
 
 
じつは秋に四国でフルートとのコンサートを準備中である。プログラムに「アイネ・クライネ・
ナハトムジーク第一楽章」が入っているが、ギターパートをただいま編曲中。先方から
「参考に、、」
と送っていただいたアレンジ出版譜が、途中ストロークになっていたもので、、、(笑)。
”居直り方言”もここまでくるとたいしたものだ。今のわたしには無理だ!と思いながらスコアと
にらめっこの毎日。
ジュリアーニ、ソル、パガニーニ、ディアベリ、、、彼等ならこれをギター弁でどうさばくか、
と想いを馳せながら、、、。
 
(おわり)
 

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“ずれる和音(その3)” への2件のフィードバック

  1. 荒田和豊 より:

    モーツァルトのアイネクをギターで合奏ですか、、モーツァルトの音楽は基本ピアノ的なので出来ると思いますが、メロディ以外の伴奏をどうするかですね。アーティキュレーションの勉強になりますね。
    四分音符一つ、八分音符一つに意味がないといい伴奏になりませんね。
    第1楽章よりフィナーレの方が撥弦楽器に合うと思います。

    • ryuji より:

      荒田和豊さま
      こんばんは。コメントありがとうございます。
      今回はフルートメロディーのギター伴奏です。
      そうなんです、メロディ以外の伴奏をどうするか、、、です(笑)。
      弦楽いろいろ聴いて研究中です。いずれなにか先生お薦めの音源を教えて頂けるとうれしゅうございます。

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