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『フリア・フロリダ』の周りで(その2)

 

この曲の演奏に関しては 巷にさまざまなテンポ設定が存在している

 

どういうテンポ設定で演奏しようが ある一定の心地よさを得られるところが この曲の人気の要因の一つになっているにちがいないが 曲のことを考える上でその心地よさは”罠”となる場合もある

 

あくまで私の場合であるが 他の作曲家のバルカローレを複数聴くことによって ”バルカローレ感覚”というものを からだの中に取り入れることから始める 「わたしはわたしの個性で表現したいんだ!」という人がいるかもしれないが それはあとの話 とりあえずショパンやフォーレ(もちろんメンデルスゾーンも、、)のピアノ作品をおすすめしておく

 

あと余裕があれば ギターのためのバルカローレ作品にあらためて触れておくことも プラスになるかもしれない よく教本に掲載されているコストの小品や タンスマン プジョール カタルーニャ民謡の”王子”など それらを弾きながら(テンポ設定などを含む)共通したバルカローレ感を醸し出せるかどうか・・・

 

いきなり別な曲の話になるが J.S.バッハのBWV998プレリュードについてである 20~30代の頃 あのバスの休符のタイミングの意味と なぜみんながそれを守らないのか その理由が知りたくて プロの先輩ミュージシャンをつかまえては聞き回っていた時期がある このこと自体はおそらく何ら本質的問題ではないし 音響上の理由であることまでは想像できるのだが「ああ、これね、、、この休符は別にやんなくていいと思うよ」まではみな一様におっしゃる だがその後に続くべき「なぜなら」を私に向けて具体的に言ってくれたひとは ギター界 古楽界の巨匠を含め 過去誰一人居なかった こちらが毎回「なぜですか?」と聞き返したにもかかわらず 「そんなちっちゃなことよりももっと大切なことがある」と言いたげな人が多かった そりゃ御説ごもっとも・・・

 

つまり残念なことに「消音めんどくさいし どうせレオンハルトやホピーもやってないから」が 多くのひとの”理由”になってしまっているのが当時の現状だったのである 理由がはっきりわからない場合(まあほとんどの場合わからないものだが)”書いてある通りやってみる”を選ばないことが私には理解できない・・・・以来 人間不信に陥っている(笑)

 

楽譜にはそう書いてないが「多くの人がそうしているから」「あの巨匠がそう弾いているから」 で 早々に問題を片づけてしまう人のなんと多いこと もちろん私だって他者がどう弾いているかを参考にすることはあるが それは作曲者と自分との対話が充分になされた と思えた後の話である

 

賢明な読者の方は既におわかりと思う 「フリア・フロリダ」も私にとっては同じこと 冒頭から存在している ”4拍目の付点四分休符” でバスをとめるという作曲者の願いは さしたる理由もなく暗黙の裡に無視されることがほとんどである 休符書くほうがバリオス的にはるかに面倒な作業なのに こまめに書いてあるということは とりあえず尊重してみてもいいんじゃないの? 

だってかわいそうじゃないかあ!

 

(つづく)

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