武満徹との対談の中でキース・ジャレットが言っていた。
「ほとんどの人たちは、よくパーソナリティこそ人の中の一番中心にある、
それ以上近づけないものとしてとらえているのだけれども、大事なものはすべて
そのパーソナリティより近いところにあるのですね。だからそこまで私が近づけた
時に武満さんにはもはやジャレットが弾いているとは聞こえなくなるし、カテゴ
リーだの何だのというのも、私がそこまで達しないときには、いろいろなふうに
聞こえるかもしれないけれど、でも私がパーソナリティよりも近づいた時に、
そこにあるのは音楽、ただ純粋な音楽だけ。パーソナリティというのは殻のような
もので、その殻を常に破ろう、破ろうと努力を続けなければならない。」
(武満徹 対談選 /小沼純一 編 ちくま学芸文庫より抜粋)
このキース・ジャレットの言葉に接した時、人が心の中に“パーソナリティ”という名の
たまごを保持している姿を、私は想像した。
より正確に言えば、“パーソナリティ”というのはたまごそのものではなく、たまごを
おおっている殻の部分のことで、その殻を割れば“ユニヴァーサルな世界”が詰まって
いるということだろう。
でも通常演奏家の多くは、「たまごの中身」よりも「如何に殻を割らないようにするか」
の方にエネルギーを使いがちである。
そして楽器演奏のテクニックも「殻を割るため」にはなかなか使用されない。
“パーソナリティという名の殻”のほうが、いつしかお客さんとの“音楽を通したコズミッ
クな結びつき”よりも大事にされている、という現状である。
このキースの言葉に接して以来、
「自分の殻は突き破る為にのみ存在している。」
と、自分に言い聞かせている。
言うだけならカッコいいけど、なかなか、、、。
2013・3・7
印象的な話
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