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移調について

 

先日ブログで募集した”お題”がついに来ました~(ぱんぱかぱーん)

というわけでブログ内の新コーナー”お題をありがとう!”の時間です。早速いってみたいと思います。第一弾は麻尾佳史さんから頂戴したお題、、、、

 

「お題募集に甘えて質問させてください。クラシックギターでの楽曲の ”移調” に関する先生のお考えや、訓練方法に関してのヒントなどお聞かせいただけますでしょうか。

例えば、『愛のロマンスをキーAmで弾く』と言ったようなスキルが必要か、何に生きてくるかあまり重要ではないか、どうすれば訓練できるか、みたいなあれこれをお教えいただければ幸いです。

最近音程感や和声感、指板の位置関係の理解などでレベルアップしたいと訓練を続けています。移調に関する考えをお聞かせていただければ、そこになにかヒントがあるのではないか、と悪巧みしております。。宜しくお願いいたします。」

 

うお~っ、なんでしょう!第一弾からいきなり悶絶級の高度なお題、、、。でも第一弾なだけにここで尻尾を振って、、じゃない、、、尻尾を巻いて逃げる訳にはいかないのよ。

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これまでの自分の活動を振り返ってみて、クラシックギターのオリジナル曲を《即座にその場で移調する技術》というのは求められたことがない。

もちろん訓練したら何か得られるものがあるかもしれないし、トライする価値はあるかもしれないが、結論から言うと”音符”に関して《反射的に移す能力》は、今のところ僕は一切必要としていない。

反射的な移調が求められるのは、ギターソロ演奏時よりも「歌や旋律楽器の伴奏をしている時」もしくは「ジャズやフォルクローレなど他ジャンルをやっている時」くらいかな、という気がする。

前者の場合は<決められた音符>を使って伴奏しているか、コードネームを見ながら即興的に伴奏しているかで、さらに状況は変わってくる。もっとも旋律楽器の人は決められたキーでやろうとする(またはサラってきてる)はずなので、あまりそういうリクエストはしない。現場でそんな無茶ぶりがあるとすれば、それは歌手の場合に限る。

だがそんな時、私はすかさず四次元ポケットからおもむろに”カポダスト”を取り出すので心配はない。「のどの調子が悪いから本番では半音下げてぇ~♡」と言われたら、一分だけ時間をもらい、すべての弦を半音下げるので、やはり心配はない、、、。

 

むしろ私が大切かつ有益だと考えてるのは、コードネーム伴奏を即座に移調できる能力の方だ。

キーがCメジャーの曲でコード進行が《 C-Dm-G7-C 》となっている時、心の中では常に《 I-II m-V7-I 》と読む習慣が大事である。調を変えたければローマ数字の箇所に移調先のアルファベットを放り込めばいいだけなのだ。

繰り返すが《音符をその場で反射的に》移調しないでよい、、、という場面のほうが実際多い。その場合、腰を落ち着けて楽譜を作成すればいいだけなので、これは時間がかかっても「ただやればいいだけ」である。

 

ただピアノ譜からギター譜への《移調を伴うアレンジ》でやっかいなのが、ピアノ下段の”ヘ音譜”を「まずはじめにト音読みしてそれを3度上げ、、、」というプロセスで読んでいる人の場合である(昔の私、、、)。

例えば、あるピアノ譜をギター譜にするにあたって、《4度上げ》で移調する場合を考えてみよう。上の段のト音譜はそのまま4度上げて、下の段のヘ音譜については、まずト音読みした音符を、次に3度上げて読み、それをさらに4度上げ、、、などとやっているうちに「あれれ、わたしはどこ?ここはだれ?」状態に、、、。

 

というわけで本日の個人的結論を箇条書きで以下にまとめてみたい。

 

*《反射的に移調する技術》はほとんど必要無い、、、が鍛えてみたら私の知らない有効な世界がそこに広がっている可能性は無いとは言えない

*わがままな歌手の伴奏時はカポダストが強い味方

*コードをコードネームだけで読むのではなく、機能的な度数で読む習慣は有効である

*ヘ音譜を読む時「ト音読みから3度上げ」というプロセスをとらずに、そのまま直接読む能力はかなり有効である

 

以上駆け足で書きましたが、本記事に関してなにかご不明な点やご質問などお気軽にどうぞ。ドシドシくれないとまた拗ねちゃうかも、、、。

 

2023.3.21.

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“移調について” への4件のフィードバック

  1. 麻尾佳史 より:

    早速のご回答ありがとうございます。カポを使うだけでなく、調弦自体を下げたりもされるんですね。

    コード伴奏時の対応をもう少し詳しく教えてください。上手な方の頭の中を覗かせていただくのは本当に勉強になります。

    ディグリーで覚えたコードを実際に演奏されるとき、構成音はどの程度把握されているのでしょうか?

    自分語りで恐縮ですが、最近ギター練習の一貫でピアノでの練習もしています(というのもおかしいくらいピアノが楽しくて笑ってしまいますが)。例えばI→IVなら、C135が146になるように指をちょいと右にずらす、それが結果的にFだったみたいな感覚があります。ギターでは先に指の形で覚えてしまったのでそういった感覚がなく、頭の再構築しているところです。

    • 松下隆二 より:

      麻尾 佳史さま

      コメントありがとうございます。
       
      ピアノの鍵盤は西洋音楽のシステムを視覚化しているようなものなので、理論的な把握が楽器として容易で、とてもよいと思います。が、ギターという楽器(指板)には鍵盤とは別の理論の立て方が有効かと思います。
      3,2,1 の高音弦のみを使ってトライアド(メジャーコードとマイナーコード)を反射でパッと作れるようにするのはいいかもしれません。例えばCメジャーコードだったらドミソ(基本形)ミソド(第一転回形)ソドミ(第二転回形)それぞれに固有のニュアンスがあり、その特徴に耳を傾けるのは良い訓練になるでしょう。ちなみにこの際、基本形のディグリーは下から順にI,III,V,第一転回形ではIII,V,I,第二転回形ではV,I,III,と「度数で把握」できるといいですね。
       
      編成の中で自分以外にベースを弾く楽器(ベーシストかピアニスト)がいる時は、ギターの役割的には中音域(4~3弦)から高音域(3~1弦)のみを使ってコードトーンをとれるようにしたほうがいいし、ギターがベースの役割を担うときは低音弦(6~4弦)か、もしくはフォークギター的な開放弦混じりのフルコードを自由にチョイス出来るほうがいいですね。
       
      編成によって役割が変われるのが、ギターという楽器の面白いところだと思います。
      コードの構成音は指板上で視覚的に覚えるほうがギターの場合、実践的かと思います。例えば6弦3フレットと5弦4フレットが”裏関係(増4度)”、、、とかいう感じで。

      • 麻尾佳史 より:

        松下先生

        詳細なご教示ありがとうございます。編成によって役割が変わる、という点は特に考えたことがなく目から鱗でした。

        最近俗に言うCAGEDシステムというものを使いこなせるようにしたいと思っているのもあり、お教えいただいた内容は頭では理解出来ます。感覚に落とし込めるように改めて取り組んでみます。

        • 松下隆二 より:

          麻尾さんが今知りたいことにちゃんと御返事出来ているかどうか確信が持てないまま書いているので、今後この件について知りたいことがハッキリされる都度、お気軽にコメントされてください。
           
          話が戻りますが、作品の移調といえば昔ブリームがディアベリのソナタ ” F Dur ” を ” A Dur ” で出版したりしてましたね。あれもブリーム本人にその場で「移調して!」と言ってもたぶん出来ないと思います。つまりデスクワークとしてやったのだろうということ。
           

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