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『フリア・フロリダ』の周りで(その1)

 

残された作品数の比較的多い 南米はパラグアイのギタリスト Agustín Barrios Mangoré (1885-1944) であるが その作曲スタイルは ヨーロッパのロマン派スタイルか 南米の民族音楽(フォルクローレ)スタイルのものが大半を占めている

 

その他バロック・スタイルによるものが数点あるが ガヴォットやメヌエットはまだしも ”プレリュード群” に関しては F.ショパン、”大聖堂” に関してはバッハよりもむしろ C.フランクの影響下にあると仮に考えた場合 この分野の作品は さほど多いとは言えなくなる

 

今回とりあげる予定の ”フリア・フロリダ(舟歌)” は 職業ギタリスト、愛好ギタリスト問わず演奏される機会の多い 非常に人気の高い曲であるが その理由を詮索&分析することは 今回敢えてしないでおく 作曲のスタイルとしては ロマン派スタイルの中でも とりわけシューマンの影響を感じさせるものだ

 

Francisco Tárrega (1852-1909) のライフ・ワークのひとつに ”アレンジメント(編曲)” があったことは周知の事実だが その数としてはショパンとシューマンの作品が群を抜いており 彼らの音楽をギター独自の語法に移し替えようと四苦八苦(楽しんでたとは思う)した跡が見られる

  

私見を挟めば ピアノという楽器の権化とも言えるショパンの作品よりも シューマン作品の方が ギターという楽器にはハマり易い ちなみに Miguel Llobet (1878-1938) にも まとまった数のシューマン編曲が存在する

 

A.バリオスは ”フリア・フロリダ” というギター・ソロ屈指の名曲を まったくの”無”から産み出したのであろうか? 創造の神がその瞬間 彼に舞い降りてきたのであろうか? ロマン派的発想や美学的観点からいくと そうしておいたほうがよさそうであるが 作曲の実際とは そのようなものではない

 

タレガの ”カプリチオ・アラベ” に チャピの ”セレナータ・モリスカ” という存在があったように この ”フリア・フロリダ” にも 明らかにバリオスがベースとした作品が存在したのである 『バルカローレ(Robert Schumann)』という作品がタレガのアレンジ・リストに残されている 原曲については(私の不勉強のため)不明であるが おそらくはピアノ独奏曲と思われるこの編曲をバリオスが吟味し  ”フリア・フロリダ” という素晴らしい曲まで昇華した・・・というのが私の自説

 

バリオスが素晴らしいのは シューマンの曲をきっかけとして着手したその作品によって シューマン以上に奥行きのある深い世界まで到達できた点にある 

ギターの機能を最大限活かしながら・・・

 

(つづく)

 

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