唐人町ギター教室では、楽譜が読めない初心者の方からプロを目指している上級者まで、現役プロミュージシャンが丁寧に指導致します

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ずれる和音(その1)

 
みなさま、こんにちは。唐人町ギター教室の松下です。
ところで御予約されましたか?
8日(土)”かささぎ兄弟コンサート”ですよ!
関西クラシックギター界を代表する名手、松岡滋、岩崎慎一両氏によるデュオの世界。
おふたりは20代の頃から私にとって遠いあこがれの存在でした。
どう憧れだったか、、、。
当日ステージで具体的に申し上げます。
 
前半は”かささぎ兄弟”の魅力(ギターデュオ)を存分にご堪能いただき、後半ステージは北九州
在住の名手、ご存知池田慎司さんと私も加わり、トリオやカルテット演奏をにぎやかに繰り広げ
ます(9日は北九州若松で池田氏の主催)。
正統クラシックギタリストによる結成10年を経たギターデュオの神髄をとくとご覧あれ!
開演は14:30。会場は唐人町甘棠館。この日はG20とやらで交通規制がかかっているので
公共の機関でのご来場をおすすめいたします。
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いつもレッスンに行ってる香椎浜イオン内のヨシダ楽器店で、現代ギター臨時増刊号を立ち読み
していて驚いた(その後購入しましたのでゆるして、、、)。
いわゆるカルカッシギター教則本Op.59(有名な『25のエチュードOp.60』とは別ね!)の
完訳版なのだが、原善伸氏監修/上谷直子氏翻訳の134ページにわたる労作で、昭和のギター
教室が教則本として重宝していたさまざまな”カルカッシ教則本”の誤りを見直すべく、
1835年パリで出版されたフランス語によるCarli版をもとにオリジナル通り完訳し、註を付けた
もの。非常に有意義なお仕事であり、無条件で頭が下がる。
 
 
で、これを読んでいてなににビックラこいたかというと、《和音とその弾き方》の項目での
カルカッシ自身による説明、、、。
 
 
(前略)和音のすべての音がよく響くようにするには、左手の指は金槌のような形に曲げ、フレットの近くを押さえ、他の弦の振動を妨げないようにすること。右手の指は弾く弦の上に置いておき、振動を与えるときまで離さないようにします。
和音はいつも少し崩すかアルペジョで、つまり一音一音ずらして弾きますが、同時に弾いたときと同じ効果を与える程度に速く弾きます(この後譜例が続く)。テンポが遅いときは、和音を通常より遅めのアルペジョにし、和音の横に()【カッコ内に縦波線のアルペジョ記号/松下註】という記号で指示することがよくあります。テンポが速くメリハリがあってギターの音を多く使う曲では、この記号が付いた和音は親指ですべての弦を力強く素早く滑らせるようにして弾きます。
~『完訳カルカッシ完全ギター教則本Op.59』23~24ページより/監修:原善伸、翻訳:上谷直子(現代ギター社)~
 
 
左手指の”金槌”というのはいわゆる”アーチ型”を指していると思われる。この箇所に関する註が
付いていて「西洋の金槌(ハンマー)は湾曲している」とある。
いやいや、それよりも!
カルカッシが”和音というものはアルペジョする”ことを前提として説明していることですよ。
これってギター弁という”方言”を、カルカッシ自身が真っ向から受け入れていたということ
なのであるよ(同時代のカルリもそうだったらしい)。
 
 
私にとって個人的にもっとも衝撃だったこの箇所についてはやはり註が付いており、
「ここの解釈には注意が必要だ」「和音のすべてをアルペジョするかについては、よく検討する
必要がある」
 
 
従来の捉え方からしても、この註の言わんとすることはよくわかる。別にカルカッシやカルリが
そう述べているからといって、それが当時のギタリストの一般的なスタイルだったとするのは
確かに早計であり、いささか乱暴であるかもしれない。
だがこの註自体が、自己内部での固定観念との衝突による叫びにも似た様相を呈しているのも
正直わたしにとっての率直な印象、、、。
 
ここで間違いないのはカルカッシ本人がそうだった、という事実のみである。
 
(つづく)
 
 

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