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Dystonia

ジストニアとの対話~セクション4

 

《2021/3/28》

昨夜の坂場氏のアドバイスをもとにp指の脱力を心がけるうちに “基本動作アイディア“がひとつ出来た

pは基本、腕のダウン動作で弾く

i,m,aは、ウラは”ポンセタッチ”、オモテは”まごの手タッチ

腕全体をオルタネイトな動きとして感じる

 

 

「禁じられた遊び」パターンは a, m, i がそれぞれオモテ、オモテ、ウラとなる

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2021/3/30

松下先生、いつもお世話になっております、坂場です。

先般頂いた質問にお答えしたいと思います。

結局昨日はバタバタしてしまい、遅くなってしまいました…申し訳ありません。

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30才ごろの”末期的な状況”から一年のリハビリ療法で『悲歌』『アランフェス』が弾ける状態まで回復されたということでしょうか?

 

詳細な時系列を忘れてしまったのですが、悲歌やアランフェスを弾いた後に演奏の仕事をお休みしたのは間違いありません。

これらの曲を弾いている間も、どんどんジストニアの症状は悪化していました。

山田岳さんとの二重奏のあたりが最後だったと思います(記憶では、この時は手に矯正器具を付けていたと思います)。

今は、比較的色々な曲が弾けるようになりましたが、それでもトレモロ作品とか、ジュリアーニのような速いアルペジオ的な作品は弾けません。

悲歌は弾けるかもしれませんが、アランフェスは今でも無理だと思います。

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私の”現状”は、先生がご覧になられて、当時の先生よりも症状は軽いでしょうか?重いでしょうか?それとも同じくらい?

 

私がお休みする頃に比べたら、はるかに良い状態だと思います。

申し上げた通り、右手をギターに近づけただけで熊手型に変形するという状態だったので、そもそも音を出すことが出来ませんでした。

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ゆっくりを心掛けると二番目の動画の感じですが、「いやいや、もっとゆっくりだよ」「mをセットした時、 i が巻くのをほっとかないほうがいい」「そのままでいい」など気付かれたことがありましたら教えていただきたいです

 

拍を守って練習するときは、動画くらいのテンポで良いように思います。

拍を守らない練習、例えば m をセットした時に i 指が脱力しきるまで待つ、というような練習も必要かと思います。

そして、前回メールで申し上げた通り、p指の脱力はかなり意識した方が良いと思います。

重力を意識し、重力をもって弾弦できることを目指します。

また、弾弦前、弾弦後、ともにマックスまで脱力してみてください。

p指の改善が右手ジストニア治療の中心となることは、デビッド・ライズナー氏が述べており、私も経験的に効果を実感しています。

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* i の末端関節を、ガムテープで固定しての練習も一日数分やりますが、これは「ずっと固定すること」が前提なのか「いずれ取り除くが、動きを覚えるために今は付けている」のか分からずにやっています

それについてもしお考えがあれば、お聞かせいただきたいです

 

器具を使う練習はあまりお勧めできません。

これまた経験則なのですが、器具を使った練習をすると、その後かえって状況がひどくなることがほとんどでしたので…。

おそらく、器具に甘えてしまって、脱力の練習が中途半端になってしまうのだと思います。

ただ、通常の練習が行き詰ったとき、状況を打開するために使うことはあります。

また、どうしても避けられない本番がある時など、止むを得ず使うこともありました。

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*「禁じられた遊び」などのアルペジオなどに関して、従来とちがう右指パターンを開拓したほうがよいのか?それともリハビリ練習によって従来の使い方が動かせるようになるものか?練習時、ここにも迷いがあります

もしご意見をお持ちでしたら、お聞かせいただけないでしょうか

 

代替的な運指を開拓しても、必ず行き詰まる、と思っています。

その時は弾けるようになっても、根本的に力んだ状態が改善されない以上、近いうちに症状は悪化していくと感じています。

逆に、力み癖がとれてくれば、ある時あるパターンが突然できるようになることもあります。

ただ、一つのアルペジオパターンに拘泥しすぎるのもあまりよろしくなく、その時出来なければサクッと諦めて、別のパターンを練習することはあります。

 

私が思うに、ジストニアの治療に有効なのは、心と体の両方をリラックスさせることだと思います。

関西の渡部先生が「ゆる体操」を行って心と体をリラックスさせて治したとおっしゃっていましたが、説得力がありました。

私は「ゆる体操」なるものは行っていませんが、出来るだけ本番出演のプレッシャー、ストレスを回避し、弾きたくないときは全く弾かず、ギター以外にもやれることを増やして「ギターがなくてもなんとかなるさ!」というマインドになるように心がけています。

また、「弾けている自分」という理想を思い描かないようにしていて、弾けない自分、指が動かない自分を認めるようにしています。

なんというか言い方が難しいのですが、それが自分の個性なんだと思うようにしており、理想や他人と自分を比べないように心がけています。

練習するときは、とにかく脱力を心がけ、抜けるところは全部抜く、という気持ちで取り組みます。

少しでも力みを感じれば、その時たまたまフレーズが弾けていても、将来は必ず弾けなくなる、と思うようにしています。

逆に、他人の10分の1のテンポでも、脱力して弾けたなら「弾けた!」と思うようにもしています。

どんなにゆっくりでも弾けないときは、まだそのフレーズとはご縁がないんだなあ、と思ってサクッと諦めます。

大体、こんな感じです。

ご参考になれば、幸いです。

 

坂場圭介 拝

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2021/3/30

坂場先生

このたびも本当にありがとうございます

お言葉ひとつひとつが現在のわたしにとって

どれも大変貴重なものに感じます

「やはり!そうなのか」と腑に落ちた所と

「なんと!そうなのか」と目から鱗が落ちた所とが

今回は強烈オンパレードでした

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ご指摘頂いた中で、今後の練習で”特に”肝に銘じたいことは

「拍を守らない練習の中で、mをセットした時に i 指が脱力しきるまで待つ」

「p指の脱力は、重力を意識し、重力をもって弾弦できることを目指す」

「また、弾弦前、弾弦後、ともにマックスまで脱力してみる」

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《感覚トリック》については、今後の展望が見えなかったので、今回、先生の”経験則”が非常にありがたかったです!

そして《代替的運指》に関しましては、先生のお言葉を信頼しつつ、慎重かつ柔軟に試行錯誤してみようと思います

ちなみに渡部先生のお名前は一方的に存じ上げております

「ゆる体操」非常に興味があります

坂場先生や渡部先生も含めたジストニア療法の諸先輩方は、前人未踏の逆境の中で、みなさんそれぞれ御自身のからだを使いながらの試行錯誤による《貴重な経験則》を積み上げてこられていますね

それを今、このようなカタチで享受させていただける自分を「本当に恵まれている」と感じますし、その末席に加えていただいた以上、私自身も自分の身体を使って、なにかしら貢献したいという思いをおかげさまで今回持つことができました

D.ライズナー氏のお考えは、You Tube動画のものでしょうか?

音楽家の知人に薦められ観てみたのですが、わたし実は英語がさっぱりでしてギターと無縁の方に大雑把に訳していただいた(それにさらに私が勝手に解釈を入れた)のが添付のファイルですが、、、大切なところが抜け落ちたりしていないでしょうか?

 

最後にあつかましいお願いがあります

自分のホームページでブログ連載などへたな文を駆使しながら現在やっていますが、遠くない将来、自分のジストニア記録というかレポートのようなものもあげていこうと考えています

決して露悪趣味からくるものではなく、坂場先生から最初にいただいたメールのお言葉

「多くの音楽家ジストニアを発症したギタリストと出会い、情報をシェアすることが出来ました」に心を動かされたからです

そのなかでこれまで戴いたアドバイスやお言葉を、《坂場先生のお言葉》としてそのまま、あるいは引用の形で使わせていただくことは可能でしょうか?

御嫌な場合もしくは条件がある場合は、どうぞご遠慮なくその旨おしらせください

すべて先生のご希望通りにいたします

このたびもお忙しい中、ほんとうに丁重かつ貴重なアドバイス戴き、心から感謝しています

直接にお礼を申し上げられる日を待ち望んでおります

ありがとうございました!

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2021/3/31

松下先生、

ご参考になる部分もあったようで、私としても嬉しく思います。

ジストニア生活は心境もすごく変化するものですので、その時その時、自分が正しいと思ったことをやっていただくのがよろしいかと思います。

それがたとえどんな突飛な思い付き・実験・考察であっても、それが一つの立派なデータ・経験となって、自分や他のジストニア音楽家の役に立つものと思います。

ライズナー氏の意見については、氏が来日された際に直接伺いました。

p指について非常にこだわりをもって指導されていましたし、特に重力を利用するのだということを何度も何度もおっしゃっていました。

したがって、youtubeはまだ拝見していないのですが、松下先生が訳された文は大筋で間違っていないのではないかと拝察します。(今はバタバタしておりますが、落ち着いたら見てみたいと思います)

私の発した言葉については、どれも、どこに掲載していただいても全く問題ありませんし、特に私の意見という断りがなくても大丈夫です。

適宜、ご都合の良い形でご使用いただければと思っています。(後略)

 

坂場圭介

 

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