唐人町ギター教室では、楽譜が読めない初心者の方からプロを目指している上級者まで、現役プロミュージシャンが丁寧に指導致します

discography

  I’m a stragere here myself

I'm a stragere here myself
定価  1,500 円

収録曲

01.カンツォーネ・バロッカ
02.シャル・ウィ・ダンス
03.カンバセイション…盗聴
04.オルフェのサンバ
05.アイム・ア・ストレンジャー・ヒアマイセルフ
06.ワルツを踊りましょう
07.燃える二人
08.ヒアーズ・ザット・レイニー・デイ
09.デスペレット・ワンズ

【試聴】05.I'm a stranger here myself

松下隆二くんのCDが出来た。

ギタリスト:鈴木大介

彼のお気に入りの映画音楽集だけど、決して有名な映画の音楽だけではない。
機会があれば新しい音楽にふれて、好きな作曲家の楽譜のためにはブラジルまで行ってしまうくらいこだわり屋の松下くんだから、自然なことなのかもしれないけれど、いったいどうやってこれだけ幅広く集めたものだろう、と感心してしまう、と同時に、ここに選ばれた9つの作品からは、松下くんの映画に対するあたたかで、センチメンタルで、すこしだけアイロニカルな憧れが透けて見える、とも思う。

「禁じられた遊び」や「ディア・ハンター」を例にあげるまでもなく、ギターという楽器はスクリーンによく似合う。
もっとも僕がギタリストだからそう思うのであって、ピアノでもヴァイオリンでも似合うのかもしれないけど、言い方を変えれば、ギターという楽器は、映画のワンシーンを効果的に彩るのではなくて、その映画の特有の雰囲気をたった数小節で代弁してしまえることがある。音色の特有さや、他の楽器よりも若干たどたどしい感じがそうさせているのかもしれない。

ところが松下くんがここで演奏しているのは、ほとんどがそうしたギターの機能美に頼った映画音楽ではなく、映画そのものを伝えるために緻密に構築された舞台装置として音楽がほんとうに重要な役割を果たしている作品ばかりのようだ。
ミュージカル作品からの曲も多いのもそのためだろうと推察される。現時点で僕はここに収められた音楽のもととなった映画をすべて見たわけではないけれども、不思議なことに知っている映画に関しては、松下くんの演奏からスクリーンの肌触りを思いおこすことができる。
わかりやすく言えばモノクロの映画の音楽を演奏する松下くんの音色は深い陰影をともなうモノトーンだし、カラーの映画の音楽には暖色の華やかさが感じられる。結果として、この素敵なアルバムは映画音楽の、というだけではなく、映画の楽しみを雄弁に伝えるアンソロジーとなっている。