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クラシック演奏と自由(その3)

前回のブログで宣伝させて頂いた太田耕平さん率いる【トリオ・パーチェ】の福岡公演『イタリアン バロック ライヴ』皆様のおかげさまをもちまして無事終了いたしました。
いやあ、、、すばらしかったです!どの曲も、、、堪能しました(ごめんなさい。ちゃんとしたレポートになってなくて、、、)。
今回は本当に『演奏家』として『音楽家』としての彼が私よりもはるか上に行ってしまったのを感じざるを得ませんでした。
ヴァイオリンとヴィオラのおふたりも素晴らしく、また一般のお客さん向けに照明で工夫を凝らしていたのも演奏のクオリティの高さを一層引き立て、非常に効果的でした。
じつは彼は中学、高校時代と私の生徒だったのです。そのためコンサートの終演後ロビーでいろんな方から「太田さんの先生」と持ち上げられ、ある方からは「師匠として誇らしいでしょう?」と言われたので、みもふたもないとは思いましたが「いや、それはない」と即座に否定してしまいました。それは決して格好つけて言ってるわけではなくて偽りのない本心なのです。
言葉足らずな部分を補うと『僕のもとを離れて他の素晴らしい先生達のもとに自主的に飛び込んだ結果、彼はわたしよりもいい演奏家になった』ということがいえると思います。ココはハッキリと書いておきたいところです。だって「勘違いする先生」って世の中多過ぎます。
「私が育てた」って、、、。
『私の元を離れた結果上達したヤツ』を見ても自分の無能力さを噛みしめこそすれ『誇らしい』気分などになれるはずがない(むしろ悔しい、、、)。その結果の上記の発言であり、決して天邪鬼ではないのです。ゆれるオジサン心をわかってあげてっ!(村上ショージさんのものまねのつもり。若い人はわからんか、、、ごめんなさい)
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前回のまとめである。
 
ある弾き方を試してそれを「音楽として成立」させる事ができたら、次に弾く時には音楽の
「別な成立のさせ方」を探るのがいわゆる『練習』である。
そうやってたくさんの成立のさせ方を体験する事で、結果クラシック演奏家は自由を得る。
 
手持ちの「成立のさせ方」の数が少ないと本番で緊張する。
「ある特定の演奏」が実現出来なかった場合、演奏そのものが「失敗」となってしまうからだ。
「こうもひけるし、こうもひける」
選択肢が如何に広いか、がクラシック演奏者に自由を与える。
 
 
今回のテーマは「クラシック演奏と自由」ということで、クラシック演奏に与えられた
『自由』というものについて考えてみたが、それは練習や取り組みの段階で
「どう臨んでいるか」
という意識がそれぞれの人の中で確立していないと難しいようである。
『自由』に付随する苦労を厭わず、それを楽しむ覚悟のある人だけが真の自由を手にするのかも
しれない。自由でない世界のほうが案外ラクに過ごせるという面もある。私の場合やるからには
「より自在な感触」を手にしたい。
 
最後にわたしが音楽に取り組むさいにいつも心がけてるふたつのことを書いて今回のテーマを
終わりたい。
 
 
【《今ここ》を楽しむこと】
こう練習しておけば本番でうまくいって楽しめるかも、、、などという打算的な練習によって
楽しみを先延ばし(先送り)しない。それよりもそれぞれの「今ここ」を充実させ楽しむこと。
それが練習中であろうと本番中であろうと「同じ温度」「常に全力」で音楽を充実させる習慣を
身に付ける。
 
【クラシック演奏を楽しむとき、作曲家すなわち他者の気持ちに寄り添う感触を決して
忘れない】
演奏がただの自己主張になってしまえば、その評価の対象が「プレイヤーそのひと」に向く事
はあっても「音楽そのもの」に向く事は無い。
プレイヤーが他者(作曲家)のきもちや考えに寄り添うことで、聞く人の中にその音楽やその場
に対する共感が呼び起こされる。この二つの感触の差は殊のほか大きいものだ。
しつこく繰り返すが「自分が何を表現するか」さらには「自分をどう表現するか」など考えない
ほうがいい。
ソロであってもアンサンブルであっても、その音楽を通じて向き合ってる【他者】へと気持ちが
向かうことがなにより重要なことだということを、これまでの経験と活動を通じてわたしは確信
している。
 
わたしにとってのクラシック音楽とは「他者の心を推し量るエクササイズ」なのである。
 
(おわり)
 

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“クラシック演奏と自由(その3)” への2件のフィードバック

  1. 橋口武史 より:

    いいコンサートでしたね!
    「悔しい」とはこれまた豪速球なホンネを…(^^;;
    若干シュート回転気味の返球で本心を吐露させて頂きますと
    「ヤベ」
    完全帰国された暁にはリュート系の通奏低音のお仕事は太田さんに全て行っちゃうでしょうね…(^_-)

    • ryuji より:

      橋口武史さま
      「質の高い定食屋」を目指している私としましては、時たま遭遇する「専門料理店」のシェフの【高み】に対していまさらコンプレックスをいだくような可愛らしさは持ち合わせていませんが、「成熟した音楽家」としての彼のなかに「わたしからの影響」がいささかも残されてなかったことが嬉しくもあり、また悔しくもあり、、、、(笑)。
      おとうちゃん、わかってあげてっ!!

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