唐人町ギター教室では、楽譜が読めない初心者の方からプロを目指している上級者まで、現役プロミュージシャンが丁寧に指導致します

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「ひけない」話

 
日頃生徒さんをレッスンしていて、頻繁に耳にする言葉のひとつに
「いや~、やっぱりトシとってくると指も頭も動かないですねえ、、、」
「楽器は若いうちからやらないとダメですねえ、、、」
といった類のものがある。
ちなみにうちの生徒さんを年齢で見ると20代~40代が非常に少なく、一桁~10代、とんで
50代~70代が大半を占める。
 
 
わたしは現在44才。50代に突入するにはあと五年以上あるから、先の言葉の信憑性、普遍性
など見当も付かないが、果たして本当にそうなのだろうか?
ちなみに現在50代~60代で活躍されてる現役ギタリスト達の演奏を聞くと、ほとんどの方が
一向に衰えを見せていない。A.セゴビアにいたっては90才まで現役だった、、、。
 
 
「指がみじかいからギターに向かないかも、、、」
これも時折耳にする。
しかし私は知っている。
村治佳織さんが如何に手が小さく指が短いかを、、、。
そしてトレモロやアルペジオ、速いスケールなどの細かいパッセージを弾くには短い指のほうが
小回りがきいて断然有利なのを、、、。
 
 
次の言葉もよく耳にする。
「いや~、家ではもうちょっとひけるんですけど、先生の前だとどうも緊張してダメです
ねえ、、、」
そ、そうか、、、オレが悪いのか、、、俺の存在のせいでひけないんだな、、、
申し訳ない、、、一体何のためのギター教室なんだ、、、(カクッ)。
 
 
まったく、、、「ひけない理由」を探してるヒマがあったら練習しようぜ、みんな!
あっ、でも「練習し過ぎ」もカラダに良くないから気をつけて!
(アドヴァイスってなんてむずかしいんだ、、、。)
 
 
曲中『セーハ』の箇所をレッスンしていて、なかなか要領がつかめない生徒さんから
「先生のような方はさぞかしすぐ出来たんでしょうね」
と言われたことがある。
じつは他の生徒さんからも似たようなことを言われたことがあるので、これを今回のブログの
テーマにしたい。
漠然とそのような印象をおもちの生徒さんってわりかし多いのではなかろうか?
すなわち
「プロとして活躍するぐらいの人は若い頃からギターをやってるせいで、自分のような苦労を
せずに弾きたいものがつぎつぎに弾けて現在に至っているんだろうな、、、」という印象を
おもちの方、、、。
ひとこと言います。
「とんでもない!!!」
 
 
今まで二十年以上レッスンしてきて、『セーハ』が初めから音が出る人なんてほとんどいない。
もちろん私も例外ではない。
『禁じられた遊び』に初めて取り組んだ時の悲惨な状態は今でも思い出す。
7フレット・セーハの箇所に差し掛かると
「ぽここ、ぽここ、ぴここ、ぼこっ、ぼここっ、ぶちっ!」
メジャーに転調した2ページ目に至っては
「ぼこっ、、、びちっ、、、、、ぐしゃっ、、、、、、ぐわしっ!」
このような状況をすぐ脱出できたのならまだしも3~4年経ってもあまり変わらなかった。
自分にとっておもしろくない状態が続いたが、今振り返るとあの時期よくやめなかったものだ。
当時の私と比べると、今の自分の生徒さん達のほうが何とまあ器用な方々であろう、と思う。
 
 
わたしの場合ギターを始めてから最初の十年間は「おもしろくない時期」「ひけない時期」
のほうが割合として圧倒的に長かった。
カルカッシ、ソルなど古典のエチュード漬けの状態の合い間に兄の影響で中学から洋楽ロック
を聴き始め、高校で友達とのバンド活動にハマり、高校三年の頃R.ディアンスやA.ヒナス
テラの『ソナタ』などを初めて聴き、「うおっ!コレってプログレじゃん(すごい誤解だ)」
とカルチャーショックを受け、ひきちぎるような汚い音でそれらのソロ曲を無我夢中で弾き
まくった辺りから自分にとって『クラシックギター』が大事なものになってきたのであった。
だが今にして思えば、そのころでもまだ『セーハ』は上手に出来なかった。
 
 
要は私のような者が恥ずかしながらも現在プロとして活動させていただいてるのは、
「器用かつものごとの習得がはやい」わけでもなく
「子供の頃から鍛えてきた蓄積」のおかげでもなく
「親が月謝を払ってくれた」おかげであり
「しつこく続けた」ことの結果なのである。
ギターをひくことに関してわたしの場合、細く長くやり続けた最初の十年があり、突如自分の
中での線が太くなった先述の高校時代があるが、一度太くなった線がその後も細くなったり太く
なったりしながらも、ここ十年ぐらいはある一定の太さを維持している。
ここで言う「太さ」「細さ」というのはいわゆる『自分にとっての充実度』の幅をあらわして
いる。
 
 
ただひたすら続けることによって出来るようになるたぐいのことも世の中には存在する。
わたしにとってのギターとはそんなものである。
いまだに出来ない事のほうが圧倒的に多い気がするが、、、。
まあ、のんびりいってみよう。
 
 
2015.9.8.

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“「ひけない」話” への2件のフィードバック

  1. S.Hongou より:

    「石の上にも三年」という金言がありますが。
    三年はとうにすぎて、どちらかというと、最近は、
    「これもできない」
    「これも弾けない」
    「音が汚い」
    そんなことばかりで、どちらかというと、凹みます。
    (そうは見えない、とお思いなられていても、そうなんです!)
    あと何年弾けるかなぁ、という漠然とした不安と、でも弾けなくても弾いているとなんか楽しい。
    というのが今の状態です。

    • ryuji より:

      S.Hongou さま
      「まだ出来ないこと」に目がいきがちですが、「すでに出来るようになったこと」もたくさんあるわけですよね。
      時間をかけないと結果が出ない類のことも世の中たくさんあるし、、、。
      まあ、ぼちぼちいってみましょう。

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