今月10日と11日、北九州のギタリスト池田慎司さんの主催イヴェントで、大阪在住のギタリスト岩崎慎一さんによるコンサートとレッスン会がおこなわれた。まずは大変ご多忙の中、主催によって、この貴重な時間をわけてくださった池田氏に心から感謝したい。
岩崎氏と知り合ったのはかれこれ30年ほど前、、、学年はあちらがひとつ上だが、当時国内での評価もすでに高く、私からすれば ”見上げるような兄貴的存在” 。その後、同じ時期にあちらはスペイン、私はフランスにそれぞれ留学した。
私がわずか1年で音を上げ帰国したのに対し、岩崎氏は8年以上滞在。べつにガマン比べでも何でもないのだが、その後のおたがいの活動の仕方を象徴しているかのようで、そのことは個人的に多少気になってはいる (笑) 。
今回のコンサート、前半は岩崎氏のソロ演奏。じつはこれだけ長いお付き合いをさせていただいてるのに、こういう形でガッツリ聞くのは初めてだったので、アンサンブルの時とはまた違うその安定感、安心感、あたたかさ、繊細さ、親密さに内心おどろいた。
タレガの小品、ファリャのドビュッシー讃歌、そしてバッハのシャコンヌ、、、。
作品に対する深い共感と愛着を、派手に演出するでもなく、美学を押し付けるでもなく、ただひたすら慈しみながら丁寧に丁寧にすすめることでその場に現れる ”ひとつの世界” 。
そういう生き方をしていなければ絶対に出てこない世界。
コンサート後半は、岩崎・池田デュオ、岩崎・松下デュオと続き、それぞれのあゆみが三叉路で交わるかのようなトリオ。そしてアンコールに応えた岩崎氏による珠玉の演奏「朱色の塔」。
様々な角度から照らされた ”岩崎慎一の世界” に、ご来場いただいたお客様からもお喜びの声をたくさん戴けた。
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そして翌日は、北九州守恒にある ”音楽Goya” にてプライヴェート形式でのレッスン会が行なわれた。
私が最も印象的だったのは、4人の受講生にアドバイスや励ましを贈る、岩崎氏の【心の距離感】だった。
それは受講生との距離感はもちろん、作品との距離感、作曲者との距離感、自身との距離感、、、こういったすべてを含む距離感が、私の場合より、いずれも一歩深く踏み込んでおり、日頃自分が如何に生徒さんを突き放した距離でレッスンしているかを思い知らされた。
岩崎氏のレッスンの場は、演奏者、作品、作曲者へのあたたかい共感で終始満たされていた。
2022.12.14.