唐人町ギター教室では、楽譜が読めない初心者の方からプロを目指している上級者まで、現役プロミュージシャンが丁寧に指導致します

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大阪での公開レッスン

去る4月9日(日)大阪の守口市にある『大阪ギタースクール』にて、わたくし松下隆二の
レッスン会を開催して頂きました。主催は関西を代表する実力派ギタリストであり、尊敬する
先輩でもある岩崎慎一氏にこのたびお世話になりました。
以下簡単なレポートです。
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全体の流れとしては、個人レッスン(おひとり50分)を3人、小休止を挟んで松下による
30分間ミニレクチャー、もうおひとり個人レッスンをやって、最後にギター・カルテットの
レッスンで終了、、、その後場所を移して『打ち上げ』になだれ込んだ。
 
 
おひとり目の受講者は岡本健夫さん。「オリエンタル(E.グラナドス/佐藤弘和編)」で受講。
 
主に中間部(Lento assai)に出てくる装飾を、拍のどのタイミングに入れるか、についての
話となった。
あと聴講用として皆様にお配りした楽譜はオリジナルのピアノ譜だったが、作曲者によって
書かれたフレーズ線などが、ギター譜の場合は省かれて印刷されることがほとんどなので、
編曲作品の場合はそういったことも調べてチェックすることで、作曲者の意図に、より近づく
事が出来ることも実感して頂けたと思う。
 
 
おふたり目は古橋充吉さん。「アヴェ・マリア(J.S.バッハ~C.グノー/F.タレガ編)」での
受講。
 
歌の編曲作品の場合は、歌詞の意味および発音を検討することで、演奏のアプローチがより
具体的に定まってくる。原曲はバッハであるが、グノーおよびタレガの手が入っていることも
あり、この曲は『ロマン派作品としてのアプローチ』を試みるほうが妥当であろう。
ロマン派特有のアプローチもさることながら、タレガ特有のギターに対するアプローチの仕方も
併せて検討すると、素材としての曲に対する興味は尽きない。
そういった表現について具体的な実例を交えながらアドヴァイスしていった。
 
 
3人目の受講者はレッスン会常連の高橋通康さん。
 
曲は「プレリュードBWV998(J.S.バッハ)」だが、これは過去すでに3回ほどレッスンして
おり、演奏も素晴らしく特に申し上げることもなかったので、”冒頭三小節の温度差を表現する
こと” についてチラと触れたぐらいで、もう一曲の受講曲
「11月のある日(L.ブローウェル)」に話題を移した。
この曲で話題の中心としたのは「如何にこの曲の ”スタンダード演奏” に惑わされることなく、
この曲の音と向き合えるか」ということ。
作曲者のアイディアと自分が如何に直に向き合うか、、、に加えて、作曲者がギタリストの
場合、その人のギタリストとしてのテクニックが ”作曲そのもの” にどう影響しているのかを
考慮するのもまた楽しい作業である。ちなみに ”ギタリスト、L.ブローウェル” のテクニック
の基盤はE.プジョールのメソッドであり、つまり彼の技術はいわば『タレガ直系』なのだ、と
いう事実はもっと認識されてよい。
 
 
ここで20分の休憩をはさんだあと、30分のミニ・レクチャーのコーナーを今回設けさせて
頂いた。テーマは「楽器を弾きながら拍子をとる技術に関して」。
(開放弦のみで演奏できる)様々なリズムの譜例を用意し、「拍のオモテとウラ」について特に
”真ウラをとることの重要性” に今回スポットを当ててみた。
 
 
4人目の受講者は麻尾佳史さん。昨年大阪でのコンサートにご参加いただき、共に二重奏を披露
した私にとっての演奏仲間でもある。
 
受講曲は「アッシャー・ワルツ(N.コシュキン)」。
J.ウィリアムスの演奏で有名になったユニークな曲であるが、今回レッスンのポイントとなった
のは、”ユニークな音程” ”ユニークなコード進行” を感じるためにも、”オーソドックスな音程”
”オーソドックスなコード進行” をカラダに入れておくことが大事だ、ということ。曲中の様々
な部分を使って(譜面と違う)オーソドックスな進行と(譜面通りの)ユニークな進行を弾き
わけて頂き、実感してもらった。
 
 
最後の受講は結成4カ月目のギターカルテット”Public Works” の皆さんで、受講曲は佐藤弘和
さんの力作「Canary」より第二楽章『竜血樹の島』。
 
若いメンバーによる練習熱心なグループだけあって非常によくまとまった演奏。
今回のレッスンのポイントは、「譜面に書いてあることをただ実行しても音楽として活き活き
しない、、、そんな時どうするか?」
この課題意識はメンバー全員がすでに持っていたようで、「弾くことからさらにもう半歩、
音楽に踏み込むための後押し」を具体例を挙げながら示した結果、演奏はみるみる良く
なった。
つまり音楽するための技術は、大きく分けるとふた通りあって、ひとつは「楽器を演奏する
技術」であり、もうひとつは「譜面から作曲者の意図を読み取る技術」である。
 
 
 
大阪ギター界は子供から高齢者まで一般愛好家の層が厚い。九州と比較して特筆すべきことは、
大学卒業後の20~30代層のギターとの関わり方である。各年代層ごとに活気があるが、
その世代の充実ぶりが特に羨ましくもあり、今後の九州の課題でもあることを再確認した。
 
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今回このような機会を与えてくださった主催の岩崎先生、大阪ギタースクール主宰の井谷正美
先生、お忙しい中駆けつけてくださった猪居先生、やーそさん、いつもお手伝いしてくださる
藤本百合江さん、ご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました!!
 
高橋通康さん

 

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“大阪での公開レッスン” への2件のフィードバック

  1. S.Hongou より:

    大阪まで押しかけまして、ご迷惑だったかと。(次回も企んでおります)
    今回、とても個性的な演奏を聞くことができ、学習になりました。
    「11月のある日」
    この曲は、某氏の演奏があまりに有名になりすぎていましたが、先生が弾いていくださったフレーズを聞いた時に身が震えました。(先生は、タレガの曾孫弟子になられるのでしたね)
    通勤の間に、ジュリアン・ブリームやイエペス、セゴビアを聞いています。
    この人の演奏だと強烈に判るほどの濃密さに、先生が弾いてみせてくださった「11月のある日」が重なりました。
    美しくそつなく弾く演奏が多い中、作曲家の内面にまで踏み込んでいくことがどんなに難しく高度なことなのか、改めて思い至りました。
    ありがとうございました。

    • ryuji より:

      S.Hongouさま
      迷惑なんてとんでもない!遠いところご苦労様でした。
      この辺は好みの話になるのでしょうが、私自身はごつごつざらざらでこぼこした演奏が好きでして、、、。
      レッスン会打ち上げの後、岩崎氏とふたりで飲みに行ったさいにもこの話になってしまいました。我々ヤングはA.セゴビア、J.L.ゴンサレス、L.ブローウェル、A.ポンセ、、、彼らのごつごつざらざらでこぼこしたところが心にひっかかるのだと、、、。
      そして”そういったもの”と”洗練されたもの”が両立しないかというとそうでもないと思います。
      思うに洗練すべきは「ギターから引き出される音色」ではなく「作品に含まれるドラマを感じ取る感性」ではないでしょうか?

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