『Capricho Arabe』の周りで(その4)

 

 

第二イントロの後、こんなかんじですが、、、

 

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場面Aのメロディー二拍目のラの上のアクセントは、「ここから唄いはじめて、次の小節一拍目

ラまでが”ひと区切り”」という意味合いにとることが出来る。つまりただ強く弾くだけでなく、

三拍目表をこえて裏の”ソ”につながってゆく持続感がポイントである。

なお合奏版において、ここの 2nd. 3rd. 4th. パートは、管弦楽風(あるいはチャピ風)になる

よう、スタッカートによるアーティキュレーションを推奨している。

そして基本インテンポであっても、セレナータ特有の「前に進む感じ」は失いたくない。

 

 

オリジナルであるギターソロ版は、場面Aの7小節目後半からアッチェレランドがかかり、

カデンツァじみた雰囲気を醸し出しているが、合奏においては(チャピのように)テンポのまま

いく為、タレガの指示している4拍目アタマ”レ”のテヌート(ten.)は実現しない。

だがここは前回お話した、”イントロ予告”とのちがいを比較するためのニュアンスとして、

ソロ版ではぜひこだわりたいところ。「イントロで出てきたミじゃなくて、このレが本命だよ」

というのを(強さではなく)長さで示してほしい。

 

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あと「そんなのあたりまえじゃねーか」と言われるかもしれないが、以下のアルペジオの

相似点と相違点を比較して、マイナー感とメジャー感をそれぞれ描き分けよう。

 

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こういったことは一旦練習に取り掛かりはじめると、どんどん考えなく、あるいは感じなく

なってしまうものだ。なぜなら弾いてる最中は「間違えず弾けるか」が最重要事項になり

最大関心事になってしまいやすいからだ。

ギターをちょっと脇に置いて、珈琲片手に《楽譜を眺める時間》がいかに大事なことか

(珈琲じゃなくてもいいですよ)。

”どう弾くかのプランニング”、、、それが定まらないままギターを手にし、やみくもにギターを

鳴らしていると、自分の関心が「間違えたか」「間違えなかったか」ばかりにいくのは、

まあ当然と言えば当然である。

 

 

オリジナル版ではラストの小節に入る直前、フェルマータがかかる。

突如引き延ばされるドミナント和音、、、、、

聴いている人達の大半は、次に”ごく普通のDマイナーコード”を想定するに違いない。

だがそこで響くのはトニックのハーモニクス。

つまりこの曲の冒頭でひびかせたドミナント・ハーモニクスの返事をここですることによって

曲のアタマとおわりを一挙に繋げたのである。

その後しずかに響く、想定よりも一オクターブ高い、最後のDマイナーコード、、、。

今風に言うと、こういった”ネタの回収作業”ができるということが、重要な作曲技術のひとつ

とも言えるのである。しかし、ただなにげなく弾いていると、自分にとってそれが当たり前の

ことになってきてしまう。そうしてリアリティが消え、演奏は死んでゆく、、、。

 

 

私が演奏に際し常に心掛けているのは、曲の中で起こっている(一見当たり前にも思える)

そういった出来事にさしかかる度、「びっくりする」「関心を持つ」「強く感じる」こと。

 

 

映画や小説で、仮に先の筋がわかっていたとしても、その瞬間が来るたびに人間は幾度でも感動

することができる。それは神が人間に与えた恩寵のひとつ、、、、ナディア・ブーランジェが

そんなことを言っていた気がする。

 

 

(おわり)

 

 

2020.8.29.

 

カテゴリー: エッセイ, 明日のギター演奏の為に, 暴論的持論, 松下流アナリーゼ   パーマリンク

『Capricho Arabe』の周りで(その4) への2件のコメント

  1. S.Hongou より:

    今回のシリーズ、アンサンブル科のレッスンで聞き逃していたり、忘れていたりを復習、再発見できました。ありがとうございます。
    ギターを手にし、パート譜だけだと、間違って弾かない、でがつがつしてしまいます、はい。
    スコアを見ながら読ませていただきました。譜面を眺める、読んでいく、がもっと楽しめるようになりたいです。

    • ryuji より:

      S.Hongouさま

      いつもありがとうございます。
      重奏にしろ合奏にしろ、アンサンブルのポイントは如何に”自分以外の音を感じながら弾くか”というところですが、そのためには自分のパートに対するある程度の心の余裕、そして前面に出るにしろ、裏方に徹するにしろ”自分の役割をわくわくしながら弾けるか”が大切だと思います。

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