夏の終わりと秋の始まり

 

去る9月1日(土)、北九州市のリバーウォーク内《北九州芸術劇場小ホール》に於いて北九州市

在住のギタリスト池田慎司さん企画によるコンサート『わたしたちのスペイン』が開催され、

大盛況のうちに幕を閉じた(主催:K・I 企画)。

日頃のご恩返しに、とばかり私も”押しかけ舞台進行責任者”をかって出たのだが、とても良い

経験をさせていただいた。

 

 

今年に入ってから着実に準備を進めている彼を間近で見ていたので、今回のイヴェントが彼に

とって如何に重要なものか、私も感じとってはいた。

若かりし日の彼がスペイン留学時に絆を深めた4人の先輩たちをこのたび東京、大阪から招き、

現在5人のそれぞれの活動の基盤となっている”スペイン音楽への愛”をベーシックなものとして

プログラムが組まれた。

 

 

この5人(敬称略:池田慎司、坪川真理子、富川勝智、東隆幸、岩崎慎一)によるコンサート

は、東京でこれまでに幾度か開催されているが、今回は池田さんの企画ということでプログラ

ミング(選曲)から演奏の方向性まで全面的に彼がイニシアチブをとり、現在日本のクラシック

ギター界の第一線で活躍中の先輩方4名が、豊かな経験と柔軟性を持って彼を支えた。

 

 

なにせ本番二日前に出演者全員北九州に入り、丸二日間かけてどっぷりリハーサルする、という

充実ぶりにまず驚かされた。初日のリハは私も隅で見学させていただいたが、ギター五重奏の

表現力と可能性、メンバーによるアレンジの質の高さに触れ、さらにビックリ!

レパートリーがほぼ無いに等しい”ギター五重奏”という荒地に突如巨大な建築物が出現したかの

ような錯覚に陥った。

今回はスペインの大衆オペラとも言える”サルスエラ”の音楽も多数演奏されたが、これらの

音楽がギター五重奏という形態にとてもマッチするのである。今後出版の機会などあれば、

日本のギター界における「五重奏」および「サルスエラ音楽」の普及に、確実に一役買うと思う

のだが、、、。

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リハーサル二日目は聴けなかった。

何故なら私も本番があったのだ。

もうかなり長いこと続けている七弦ジャズギタリスト柳武史雄さんとのデュオライヴ

「SOLOx2&DUO」シリーズである。

タイトル通り、お互いのソロ演奏およびデュオ演奏で構成されるこのライヴ、毎回選曲が

ハードになっていってる気がするのは気のせいか?

長年やってるので、もうそろそろお互いの得意、不得意を見極め、安全な(?)選曲を

やっても良いのではと思うのだが、お互い全くその気配がない(笑)。

 

 

面白いのは、ライヴ中にお互い”プレッシャーのかかる場所”が、ほぼキレイに真逆だという事。

私はソロ演奏は日常的であるが、ジャズギタリストにとっては結構な挑戦であるらしい。

一方私はデュオで《テーマを弾いてる時》《コード伴奏をしている時》はお気楽だが、アドリブ

ソロタイムになると未だにヘンな汗をかく。柳武氏は”タマ読み(音符をその通り弾くこと)”

よりも、アドリブタイムになるとやはり俄然活き活きとしてくる、、、といった感じ。

 

 

そんなおじさんふたりがお互いかなりやんちゃにわんぱくに今回攻めたので、結果とても

楽しかった。

ちなみに私は、フリア・フロリダ(A.バリオス)、祈り(L.ボンファ)、野獣死すべしのテーマ

(たかしまあきひこ)の3曲をソロで弾き、柳武さんとのデュオではJingles(W.モンゴメ

リー)、Bumpin’(W.モンゴメリー)、porro(G.モンターニャ)、How My Heart Sings

(E.ジンダース)、Carmela Dame La Llave(Angel Luis Torruellas)、Cantaloupe

Island(H.ハンコック)というまさにラテンとジャズの”ごった煮状態”。

ああ、たのしかった!

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翌9月1日(土)は、昼過ぎに北九州芸術劇場に入り(シャキーン!)、初めての舞台進行責任者

一日体験。

個人的にはいろいろ至らないところもあったが、いつもと違う視点でコンサートに臨む事が出来

大変貴重な経験をさせていただいた。

 

 

丸二日間のリハーサルを経て、五人の演奏もさらに素晴らしく進化(深化)していた。

最年長の岩崎氏が常に全体をクールに見渡しサポートする中、東氏が亡き師匠M.バビ

ローニ氏ゆずりの深い音色でアンサンブル全体を彩る。富川氏は演奏の推進力を担当する言わば

起爆剤のような存在だ。

その3人の上に池田氏と紅一点の坪川氏が縦横無尽に駆け巡る、、、。

ホール満席のお客さんは上質のスペイン音楽を堪能し、さぞ満足されたことだろう。

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ふと気づくと暑い夏がいつしか過ぎ去り、いつの間にかそれとなく秋の気配が忍び寄っている。

今年の夏は、自分が演奏したもの、してないもの含めて、本当にさまざまなコンサートを

体験し、いろいろなことを目まぐるしく考えさせられた。

いい感触で終われたものもあるし、残念ながらそういかなかったものもある。

 

 

だが結果如何にかかわらず、この夏二ヶ月間を通して私自身が強く意識させられたのは、

”なにかのスペシャリスト”となることをもはや目指していない自分の姿、心、立ち位置で

あった。

20代、30代の頃はさまざまなスペシャリストに憧れ、自身も”なにかのスペシャリスト”と

成れる日を漠然と目指していたのだが、40代をまもなく終えようとしている現在、そういった

気持ちが自然となくなっている、あるいは別な楽しみ方をしている自分に気が付いた。

 

 

自分を定義することなく、周りの状況にあわせてふわふわと変化したり、しなかったり

 

 

それも悪くないな、、、という素直な今の心境である。

 

2018.9.3.

 

 

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夏の終わりと秋の始まり への6件のコメント

  1. S.Hongo より:

    暑い夏は嫌いだあ。

    そう思っておりましたが、今夏は、素敵な切り紙作品に囲まれて歌を聴いたり、今まで聞いたことのないようなケーナが聞けたり、大阪行ってすごいものを見たり聞いたり。

    北九州では、念願のスペインフェス。

    音楽に指先つけているだけなのに、得がたい経験をさせていただきました!

    ありがとうございました!

    濃い夏でした。
    (抜け殻警報発令中)

    • ryuji より:

      S.Hongoさま

      こちらこそありがとうございました。
      県外も含め、たくさんのコンサートにご出席いただきまして、、、。

      今年残り三分の一、まだまだいろいろと”平成の思い出”をみなさまと共有できたら、と思っております。
      よろしくお付き合いください。

  2. 色々とお世話になりまして、本当にありがとうございました!!
    リハーサルまでお付き合い頂き、本番当日は松下さんの鞄からドラえもんのポケットのように何でも出てきてビックリ&感動しました。

    今後ともよろしくお願いいたします!

    • ryuji より:

      坪川 真理子さま

      こちらこそ先日は素晴らしい演奏を聴かせて頂き、ありがとうございました!
      コメントまで頂戴し恐縮です。

      池田氏のように精神が健全で実力もあるギタリストが、明るく楽しく活動できる《九州という土地》であってほしい、といつも思っています。
      彼が信頼する坪川さんや東さんと今回初めてお目にかかれて充実した時間をわけていただきました。感謝しております。

      チューナーはヌカりました(苦笑)。電子機器に弱いもので、、、。

  3. 東隆幸 より:

    今回の北九州公演では強力なサポートをしていただきましてありがとうございました。おかげさまで演奏することに集中できました。また、素晴らしいレポートありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

    • ryuji より:

      東 隆幸さま

      先日は素晴らしいコンサート、ありがとうございました!
      スペイン留学された方々のきずなの強さが、謎めいて見える時もあれば、うらやましく感じる時もあります。
      きっとまたどちらかでお目にかかれる日があると思いますので、またゆっくりお話聞かせていただければうれしいです。

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