個性幻想論(個性と模倣の関係)

 

”プロミュージシャン(その2)”のタイトルのもと、巷で誤解されがちな『ミュージシャンの

個性確立』に関する話を展開するつもりだったのだが、独立したテーマとして扱いたくなった

ので、前回のブログの続きは、このたびめでたく発展的解消を遂げました(ゴメンなさい、

ゴメンなさい、、、)。

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「その分野の語法を学び、吸収し、応用すること」と「他者をコピーすること」。

このふたつは時として一緒くたに語られやすい。

 

かつてのエピソード。私が福岡市内のギター専門店で、レッスンの合い間に鈴木大介氏の

アレンジ作品を耳コピーし、練習していた時に事は起こった。

折しも九州ツアーで来られていた鈴木氏の師匠F氏が、私を指差し「ハハ、大介のコピーや!

ダイスケのコピー!コピー、コピー、、、」とあたかも小学校時代の同級生のように(失礼)

露骨にはやし立てたのである。

 

 

あれはいったい何だったんだろう、、、(苦笑)。いまでも思い出すたび金縛りにあうのだが、

おそらく「こいつの中のダイスケ・コンプレックスを吹き飛ばしてやろう」といった、今思うと

F氏なりの親心、師匠心だったかもしれない(巨匠、単に虫の居所が悪かっただけかもしれ

ない)。

ただそのとき私の中に残ったのは、他者を真似、コピーして吸収するという勉強法そのものを

否定された、、、という感覚だった。

 

 

「コピーすること」「自分の表現のなかに他者からの影響を見つけられること」は、「オリジ

ナル(と思い込んでいる)な表現を生み出すこと」と比べて、かなり低いものとみなされ軽視

された時代がかつてあり、それは現代でも時折見受けられることである。

今の六十代以上のプロミュージシャン(特に男性)には多いのだが、彼らにとって(巨匠からの

それはともかく)身近な他者からの影響を口にすることは、いわば他人の軍門に下るのに等しい

ハッキリ言えば屈辱的なカッコ悪いことであった。

 

 

例えて言うと、音楽というものはいわば外国語であり、その中に《ジャズ語》《クラシック語》

《シャンソン語》《フォルクローレ語》《ショーロ語》《ロック語》など、様々な【音楽国】の

言語が存在している。

そしてその中にさらに演奏形態別の方言的世界がある(ギター弁、ピアノ弁、サックス弁、

合唱弁などなど、、、)。

漠然と「音楽はひとつ」と捉えがちだが、現実問題としてこれらの間には、明らかに表現語法や

演奏アプローチが違うという、いわば”垣根”がある。

ちなみに私の場合、これまで様々な音楽と関わってきた経験上、「ピアノあるいはオーケストラ

の世界が音楽の王道であり、共通(標準)語である」という帝国主義的視点に一切くみしない。

 

 

ともかく先人の語法を体験し、あるいは発展させるということが、現在各分野においてなされて

いる主なことであろう。

ジャズを学んでいてつくづく思うのだが、即興という建前上、何でもやっていいかというと

実際はそうではない。それがジャズである以上、ジャズの語法で喋らないとコミュニケーション

にならないのである。”おはよう””ありがとう”などの言葉を覚えてその国で自由に使いこなす

ことと、”おはよう”に代わる新たな言語を発明することは、自由の意味する次元が異なるのだ。

 

 

つまり先人を模倣して学び、吸収することは音楽する上で避けて通れない過程である。それは

悪いことでも何でもない。

ただ自分が憧れ、尊敬し、影響を受け、模倣したものの数が少ないほど、ある特定の影響が

浮かび上がるのは当然である。

その状態のことを、ひとは時として「個性(オリジナリティ)の欠如」と呼ぶのだと思う。

 

 

簡単に言えば、いろんなものから影響を受け、ばんばんコピーして混ぜていった方が、おもし

ろいものが出来てくるんじゃなかろうか、という話である。

「そのひとがいきいきと光り輝く」ために動いた方が、なんだか楽しそうな気がする。

”個性”なんてそんな当たり前なもの、追いかけなくていいじゃないか。

 

2018.4.2.

 

カテゴリー: エッセイ, 明日のギター演奏の為に, 暴論的持論   パーマリンク

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